国保引き上げ方針の埼玉県の姿勢は全国でも突出したものー国保学習会開催

 

8月25日、埼玉教育会館で党県議団主催の「8月国保問題学習会」が開かれました。埼玉県社会保障推進協議会が協賛しました。党市町村議員ほか42人が参加しました。

はじめに城下のり子団長がごあいさつ

8月25日より、県国保運営方針案第3期の県民コメントが始まったとして学習会の意義を訴えました。

神奈川自治労連の神田敏史氏が

「国民健康保険税水準統一の厚労省方針と埼玉県の位置づけについて」講演を行いました。

〇はじめに神田氏は現在進められている国保保険税水準の統一・法定外繰り入れ(一般会計から国保特別会計への支援)解消について、国が強力に進めている事項であることを強調。2021・2023年の「前世代社会保障改革関連法の改正内容」を示しました。

〇厚労省はこれに基づいてR6「国保運営方針のガイドライン」で保険料水準の統一を必須事項とし、法定外繰り入れ解消を努力義務としました。

ガイドラインの中で「保険料水準の統一を進めることは、国保財政の安定化や被保険者間の公平性から重要」としています。

その理由について

*小規模な保険者で高額な医療費が発生した場合の年度間の保険料変動が抑制される

*県内で同じ所得所得水準・世帯水準であれば同一保険料水準となり公平性が確保される」と書いています。

神田氏は「都道府県内部の自助努力でなんとかしろ」という国の姿勢を批判しました。

 

だれも本当に統一できるとはおもっていない。

講演の後半で、神田氏は「都道府県の国保担当者も、国も本当に統一化できると思っていない」と指摘

*保険税水準統一→収納率が高い市町村はソン 収納率の低い市町村はトク

       →医療費が低い市町村はソン 医療費が高い市町村はトク

*地方単独事業(乳幼児医療費助成制度や重度心身障害者医療費助成など)が統一されなければ、不可能。乳幼児医療費の対象年齢だけでも市町村ごとに格差がある。

*市町村ごとの基金の額はさまざまであり、それをどうするのか。

 

神田さんは、統一のカギは「公費負担の割合」(の増)だと述べました。

 

国に対して、埼玉県は一貫して前向き

このように、公費負担の増なしにありえない、つまり現在では展望のない保険税水準の統一に対して、埼玉県は一貫して前向きです。

A、すでに2010年の「埼玉県市町村国保広域化等支援方針」の段階で、県内どこに住んでも「同じ所得なら同じ保険税」をめざします。」と書いてあります。

B、ガイドラインに基づく令和5年度の国民健康保険制度改革スケジュールによると、年度末の1月から3月までに運営方針改定とありますが、埼玉県は7月31日に方針案を策定、8月25日からパブリックコメントが始まりました。

C、現在「準統一」を令和9年度までに実施するとしているのは、関東近県では埼玉県だけです。

D、厚労省の主管課長会議(:)では、「事例紹介」として、埼玉県の推進体制とロードマップが紹介されています。

E、埼玉県は、保険者努力支援制度(+)について、「医療費水準格差をないもの」として計算を行ったことから、2400万円もの補助を国から獲得しています。。

 

:全 国 高 齢 者 医 療 ・ 国 民 健 康 保 険 主 管 課 ( 部 ) 長及 び 後 期 高 齢 者 医 療 広 域 連 合 事 務 局 長 会 議

+国民健康保険の保険者努力支援制度 平成27年の国民健康保険法等の改正により、保険者(都道府県・市町村)における医療費適正化に向けた取組等に対する支援を行うため、保険者の取組状況に応じて交付金を交付する制度として創設されました。

 

保険税ひきあげより、統一が大事?

神田氏は、埼玉県の姿勢について

保険税負担水準が引きあがることに問題意識を持たず

保険税率の県内完全統一の目標ばかり重視した姿勢だと述べました

しかし、埼玉県の国保運営方針第3期も完全統一には大きな課題があることを認めています。

「令和3年度決算において収納率の差が最大で約9ポイントとなっていることから、その差が一定程度まで縮小された時点で、収納率格差を反映しない完全統一を実現します」と現在では完全統一の目標を掲げることはできませんでした。

見通せない完全統一を目指して、無理やり法定外繰り入れ全廃をすすめる必要があるのでしょうか?

被保険者の保険税負担を過重にすることによって、保険者努力支援制度の交付金を獲得していく意味があるのでしょうか?

厚労省に評価を受けるより、慎重にすすんでいる東京都や神奈川県とともに、国の負担割合増をめざして運動すべきでは?

このような感想にひたった講演でした。

埼玉県国保運営方針第3期の問題点

次に埼玉県議団を代表して城下のり子団長が、埼玉県国保運営方針第3期の問題点の報告をしました。

8月25日から9月22日の間に県民コメントが行われる同方針案

問題点1は 市町村の一般会計からの繰り入れを2024(令和8)年度までに全廃することです。

問題点2は 令和9年度から保険税水準の準統一(収納率以外の統一)を決定し、全県の様々な制度を統一することです。

問題点3は 収納率引き上げを目標数字も決めて厳しく追及する一方で、特定健診受診率など、国の目標に照らしても不十分な項目にまじめに取り組もうとしないことです。

問題点4 県統一の減免基準を定めますが非常に不十分なもので、先進的な市町村は後退となる危険があります。

以上の問題点を指摘し

「党県議団は、県議会で追及していきますが、ぜひ、県民コメントに意見を提出する、市町村議会で意見書をあげるなどの取り組みをお願いします。と城下団長は呼びかけました。

埼玉県社保恊と中川県議が運営方針を批判

埼玉県社会保障推進協議会の段事務局長が、7月6日から7月19日に行った自治体キャラバンで、63市町村と懇談した内容を報告。

準統一に向け県が示す保険税水準を、川口市の例で試算すると

所得に応じて年間1万2千円から5万円近く引き上げとなると指摘しました。

15年ぶりに国保税を大幅に引き上げたK自治体の職員は

「断腸の思いで引き上げた」と語ったそうです。

段氏は「国保法では国保の目的は社会保障向上への寄与」だとして、国や自治体、住民全体で支えるべきだと語りました。

 

また、改革の会中川浩県議も「一人あたりの法定外繰り入れは9186円。繰り入れがなくなれば、これだけ保険税が引きあがる。こうしたことが自殺率の上昇にもつながる。」と運営方針を批判しました。