育鵬社版教科書採択案の撤回を

県教育委員会が県立伊奈中学校で来年度から使用する歴史・公民教科書を育鵬社版とする採択案を決定したことを受け、8月21日柳下礼子県議、村岡まさつぐ県議、秋山文和県議、前原かづえ県議、守屋ひろこ県議、秋山もえ県議が「採択案の撤回と公正で民主的な教科書採択を求める申し入れ」を行いました。

教科書採択に際して「子ども人権埼玉ネット」は「教員の意見・希望を尊重してしてください。教員のみならず、保護者、さらには子ども自身の意見をも尊重する採択をしてください。過去の戦争を美化・肯定するような育鵬社の歴史教科書を生徒に押し付けないでください。公民教科書では育鵬社、自由社を採択しないでください」という請願をあげています。

また自由法曹団は育鵬社版公民教科書について「日本国憲法の原則よりも『例外』を強調。基礎基本を軽視」と指摘しています。

申し入れ書では「県民、各界から日本国憲法軽視など強い批判のあるこのような育鵬社版教科書を採択案として決定すべきではない。特別支援学校は、学校ごとに生徒の実情に応じて教員から案が提示され、それが教育委員によって検討の上、採択されました。伊奈学園中学校においても、同様の手法がとられるべきです」と述べました。

また、11日定例会では、コロナ対策を理由としつつも、傍聴者がひとりも会場に入れず、別室でモニターによる傍聴となった上、機器の不具合から不明瞭で聞き取れない状態だったこと。議事録についても次の教育委員会を待たなければ公開されないこと。しかも育鵬社の著作者・編集者が名を連ね、育鵬社の教科書採択をすすめる運動を行っている「日本教育再生機構」でかつて理事であった後藤氏が教育委員となっていることから、これでは公正性・透明性に疑念が生じると指摘し、以下の項目を求めました。

①現場教員の声を無視し、県民・各界から反対の声が上がっている今採択案を撤回すること。

②傍聴希望者全員が委員会室に入れるよう大きな部屋を確保すること。

③採択にあたっては利害関係者となりうる後藤氏の退席を求めること。

 

対応した市町村支援部長は「教員の意見を無視したという事実はありません。県立伊奈中学校の教員がすべての教科書について講評を行い、それを教育委員会に提出しています。教育委員は伊奈中学校を何度も訪問され、学校の教育方針や子どもたちの特性などよく理解されていと感じています。委員はそうした上で、その責任において教科書を決定しています」と発言。

「特別支援学校は教員が使用したい教科書を案が提示され、採択されたと聞いていますが、なぜ伊奈中学校はそうならなかったのでしょうか」と問うと「担当ではないのでわかりません。自分も英語教員だったとき、環境問題などを取り扱った教科書を使いたいと主張したことがありました。しかしその意見は採用されませんでした。教員の意見を尊重することはもちろん大事ですが、教員の意見に左右されず、教育委員の責任において決定すべきだと思っています」と答えました。

柳下県議は「75年前の戦争の教訓にたって日本国憲法ができました。戦争を美化し日本国憲法を軽視する教科書を採択することは絶対に認められません」と強調し、県教育長らに伝えるよう求めました。