外国人への根拠のない差別は暴力と戦争への道ー9月定例会を振り返って

10月15日、9月定例会閉会にあたって、城下のり子団長は以下の声明を公表しました。

記者発表

2025年10月15日

日本共産党埼玉県議会議員団

団長  城下のり子

9月定例会を振り返って

一、埼玉県議会9月定例会は、令和7年度埼玉県一般会計補正予算88億4620万円、県流域下水道事業会計補正予算62億8千万円を含む知事提出議案件15件、意見書決議案17件を採択・同意・承認して閉会しました。党県議団は、意見書案2件を除くすべての議案に賛成しました。

一、八潮道路陥没事故の補償と復旧の補正予算

流域下水道事業会計補正予算のうち、八潮道路陥没事故の補償と復旧にかかわる部分については、急施議案として9月24日に提出審査、30日に全会派一致で採択されました。

補正予算のうちわけは、①下水道管の破損および道路陥没への対応、住民および事業者への補償約7億8000万円②全国重点施設点検調査の結果を踏まえた下水道管路改修等約55億円です。

24日の本会議で城下のり子県議は、八潮市で発生した道路陥没事故に関する原因究明委員会の中間取りまとめには崩落事故の責任は、管理者の埼玉県にあることが示されましたが、知事としてどのように受け止めたか」と質問。これに対し大野知事は「議員ご指摘の崩落事故の責任については、何ら言及がありません。」と答弁し、今回の補償は県の責任を踏まえてのものではないことが明らかとなりました。

一、八潮道路陥没事故調査等特別委員会

10月9日には伊藤はつみ県議が、八潮市道路陥没事故調査等特別委員会において審査に参加し、流域下水道など下水道インフラの維持・管理・修繕を担う自治体の技術職員不足について質問。県下水道局は県内57自治体・組合のうち、技術職員が1人もいないのは11団体と明らかにしました。

同委員会では、同事故に関わり住民・事業者に寄り添ったきめ細やかな支援を求める決議、国に対し復旧事業費への財政措置を求める意見書など4件の決議・意見書案を提出することを全会派一致で決定し、のちに本会議で採択されました。

一、埼玉県議会本会議における諸井真英県議の発言について

10月1日諸井真英県議は9月定例会本会議一般質問の中で「基本的人権というのが外国人にはありません」と発言しました。これは、県議としてとうてい容認できない不見識な発言です。

日本も批准している国際人権規約について日本政府は「外国人についても、基本的人権の尊重及び国際協調主義を基本理念とする憲法の精神に照らし、参政権等性質上日本国民のみを対象としている権利を除き、基本的人権の享有が保障されている。」と、参政権などをのぞき基本的人権が保障されていると明確に説明しています。

規約の基となる世界人権宣言は、すべての人の権利を認めることは「世界における自由、正義及び平和の基礎である」と宣言しています。諸井県議の発言は、外国人を傷つけ貶めるにとどまらず、世界の自由・正義・平和を目指すとりくみに挑戦するものです。

議会運営委員会で発言する伊藤県議

党県議団は、本日、議会運営委員会において、諸井県議の発言の削除を勧告するよう検討を求めましたが、議会運営委員長は「一般質問の削除はご自身で判断する」ものとして退けました。

一、外国人の土地取得を制限するための意見書案について

「外国資本による不動産の取得を制限するための早急な法整備を求める意見書(案)」について党県議団は反対しました。同意見書は、国内の外国資本と思われる者による土地取得により森林環境と水源地域の保全に懸念や、安全保障上大きな問題が生じているとして、外国資本による不動産取得を制限するための法整備を求めています。

反対の理由は、同意見書には外国人の不動産取得状況についての、正確な根拠が示されておらず、立法事実が認められないからです。また、そのような意見書が採択されることによって、近年広がってきた外国人排外の風潮をさらに助長することになるからです。

 党県議団は、前回、同様の意見書に賛成しましたが、その後外国人の土地取得状況を調査することによって、認識を新たにいたしました。まず、森林の取得についてですが、農林水産省令和7年9月のプレスリリースによると、外国法人等による森林取得は令和6年総森林面積の0.07%、昨年1年間ではわずか0.003%にすぎません。一方でアメリカ合衆国内における外国人等による森林の所有割合は5.0%です。

また2021年に防衛省が公表した米軍・自衛隊基地に隣接する土地調査によれば、土地所有者8万人に対して、外国人とみられる所有土地は7筆にすぎないと明らかになっています。

このような事実からは、同意見書の懸念や安全保障上の問題は、ほとんど根拠がないと言わざるをえません。

私たちが、今回反対へと態度を変更したのは、昨今の外国人への根拠のない攻撃やヘイトクライムなど、排外主義的攻撃が異常に高まっていることへの懸念があります。本県議会においても、わが国も締結した国連人権規約すら踏まえない、外国人差別発言が行われました。外国人への根拠のない攻撃は、関東大震災時の虐殺のような暴力や、ひいては戦争につながっていく道だということは、日本の歴史を直視すれば明らかです。

県議会という場はあくまで、事実に基づいて、平和な共生社会づくりの先頭に立つべきと考え、同意見書に反対しました。

以上