6月定例会 柳下礼子県議が議員提出議案に対する反対討論

6月定例会後、知事が党控室にあいさつ

 

7月2日、埼玉県議会6月定例会が閉会し、柳下礼子県議が意見書案など議員提出議案に反対討論をおこないました。

 

討論全文は以下のとおり

 

日本共産党の柳下礼子です。

党県議団を代表して議員提出の議第29号議案「こども庁創設に関する意見書(案)」議第30号議案「新型コロナウイルス感染症対策のさらなる強化を求める意見書(案)」議第31号議案「学校教育におけるデジタルトランスフォーメーションを適切に進めるための意見書(案)」に対する反対討論を行います。

 

初めに「こども庁創設に関する意見書」(案)についてです。同意見書は「こども庁に強い権限を付与し、縦割り行政ではなく、子ども関連予算の一元的策定と確保」をもとめるものです。縦割り行政の解消・子ども関連予算の確保は必要なことでありますが、子どもをめぐる困難の大本にあるのは、大企業のもうけを最優先にして子どもや子育て政策の拡充に必要な予算を確保してこなかった現自公政権の政治姿勢があります。

待機児童問題の深刻化は、歴代政権が公立保育所つぶしをすすめ、認可保育所の大幅な増設を拒否してきたためです。少子化の進行は長時間労働や、非正規雇用の拡大を進める労働法制の改悪により安心して子どもを産めない状況を作ってきたからです。児童虐待対策のおくれは児童相談所の抜本的体制強化を図ってこなかったためです。子どもの貧困は児童扶養手当や生活保護制度の改悪が根本要因です。これらの問題は縦割り行政の弊害ではなく、こども庁創設により解決されるものではありません。むしろこども庁創設によって、世代間の対立をあおり、高齢者への社会保障費削減に議論が結び付けられる危険性が高いと言わざるを得ません。よって同意見書には反対するものです。

 

続いて、「新型コロナウイルス感染症対策のさらなる強化を求める意見書」案についてです。同意見書はワクチンの詳細情報を明らかにするなどとともに、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催にあたっては万全の感染対策を講じることを国に求めるものです。ワクチンの詳細情報公開推進や水際対策強化は当然のことと考えますが、東京五輪・パラリンピックは中止すべきと考えますので、意見書には賛成できません。また、マイナンバー活用でワクチン接種の効率化を進めるという文言は、党県議団はそもそもマイナンバー制度は個人情報保護上廃止すべきであり、未だマイナンバーカード普及率は3割にすぎず、更なる混乱をまねき接種を遅らせると考え反対です。

 

次に「学校教育におけるデジタルトランスフォーメーションを適切に進めるための意見書」(案)についてです。学校教育におけるDX推進は必要なことですが、同意見書の提案はむしろDX化による弊害をより増幅させると考え反対するものです。

第1に意見書案は、デジタル教科書の導入を学校DXの前提としておりますが、視力低下や電磁波障害など健康被害の面からも、紙による教育効果の高さからも、韓国など海外ではデジタル教科書をむしろ紙に戻す例も生まれております。よってデジタル教科書の導入は慎重にすべきです。

第2に意見書案は、「様々な会社の情報端末とデジタル教科書と個人認証システムの互換性の確保」を国に求めています。児童・生徒の個人情報が「学習ログ」としてクラウド上に蓄積されていくため、特定の教育産業などへの流出の危険性が指摘されています。デジタル関連法の国会審議の中で、ある国立大学機構の授業料免除情報ファイルが民間企業への提案ファイルとされていたことなどが明らかになっています。この中には母子父子家庭、障害者のいる世帯、生活保護世帯なども記録項目となっていたといいます。企業の情報端末とデジタル教科書、個人認証システムの互換性確保の推進は慎重に行うべきであり反対です。

意見書案は「教職員研修のあり方について検討をすすめる」とあります。現在の学校教育へのICT導入において、教員の資質の向上が求められることは意見書の指摘の通りです。しかし授業の質は教員自身の深い教材研究や子どもと教員の生き生きとした現場のやり取りのなかでしか深められません。ICTはあくまで授業の補助であり、どう使うかは個々の教員にゆだねられるべきです。まただからこそ少人数学級の一層の推進が不可欠です。タブレットの一律使用方法を徹底するための行政主導の研修はむしろ教員の負担増をまねくだけと述べておきます。以上を持ちまして討論といたします。