6月定例会をふりかえって

6月27日に閉会した埼玉県議会6月定例会について、柳下礼子団長は以下のような談話を発表しました。

外形標準課税を広げる県税関連条例は認められない

6月定例会では、一般会計補正予算はじめ、知事提出議案9本、意見書・決議など議員提出議案の8本が審議されました。

知事提出の県税条例改正議案は、消費税の10%への増税で広がると予想される地域間格差に備えて、地方税である法人住民税の一部を地方法人税(国税)として地方交付税の原資とするものです。消費税で広がる地域間格差を地方自治体の負担で是正するなど言語道断です。地域間格差の是正をいうのであれば、消費税10%への増税はきっぱり中止すべきです。また専決処分の承認を求める議案は、法人事業税について、外形標準課税である付加価値割・資本割の割合を拡大し、所得割の税率を引き下げるものであり、黒字大企業は減税、赤字企業は増税となるものです。大企業の法人実効税率引き下げによる税収減を、赤字で苦しむ中小企業への増税で穴埋めするもので認められません。

教科書謝礼問題と教科書採択結果に因果関係はない

議員提出議案の「教科書採択謝礼問題に関して徹底的な調査・処分、及び制度改善を求める決議」は教科書採択前に教員が教科書を閲覧し対価を受け取っていた問題について、謝礼と採択は因果関係にあり、収賄ではないかとして、第3者の徹底調査、謝礼を贈った会社と教員双方の処分、教科書採択の原則公開、採択制度の根本的改善を求めるものです。しかし本決議案の引用している東京書籍の歴史公民教科書の採択地区の大多数が、東京書籍から謝礼を受け取っていなかった、東京書籍の採択が多かったとされている特別支援学校には謝礼を受け取っている教員がいなかったなど、謝礼と採択に因果関係はありません。したがって、採択制度の根本的改善の必要性はなく、決議には反対しました。文科省もその通知で「教科書発行者が教員の意見を反映することは必要不可欠」だとしていますが、県教委は教科書に教員の生の声を反映するための適切なルールづくりに全力をあげるべきです。

震災に備え支援の必要な方、障害者・高齢者の個別計画づくりを

村岡正嗣県議が一般質問にたち、熊本地震の教訓から備えるべき点を指摘しました。特に車中泊に象徴される避難生活の問題について、障害者などの生の声を取り上げました。村岡県議は支援を必要とする方たちを、「誰が、どこへ、どのように」避難させるかという個別計画の策定市町村が27に過ぎないとして、全市町村の策定まで支援するよう求めました。

また、建設労働者の賃金水準の向上のために、公共事業の発注の算定根拠として国が定める設計労務単価が3年連続で引き上げられているにもかかわらず、現場の労働者の賃金が引きあがっていないことから、設計労務単価の引き上げを実効性あるものにすべきだと求めました。これに対して県土整備部長が、下請けが何層にも重なることにより最前線で働く労働者に適切な賃金が支払われないという重層下請け構造の改善に向けて取り組むと答弁したことは重要です。

創造する劇場=彩の国さいたま芸術劇場を今後も支えていく

村岡県議は、一般質問の中で蜷川幸雄芸術総監督の死にあたって、蜷川レガシー(遺産)の継承を求め、特に創造型の劇場であり、客席数も少ない同劇場が採算性は厳しいことから、今後も県として支えていくべきだと強く要請しました。知事は「普段重要な点が異なることが多いんですが、ここはまったく一致した」と答弁しました。

また、埼玉県立近代美術館が、全国の美術館ネットワークの中で合同巡回展などを成功させていることを取り上げ、ネットワークの形成に不可欠な学芸員の増員を求めましたが、教育長は、教育局の定数削減を進めている中であり困難だと答弁しました。

世界文化遺産登録がほぼ確実な国立西洋美術館の、設計者の弟子である前川國男氏設計の埼玉会館がリニューアル中ですが、前川建築の再評価とリニューアルオープンの際の特別企画を求めました。教育長は再評価については研究すると答弁しつつ、埼玉会館のリニューアルオープンの際には「建築ツアー」や「建物見学ツアー」を実施し、若手設計者も来てもらうなど答弁しました。

4会派で議会改革特別委員会の設置を申し入れ

定例会閉会後、民進党・無所属の会、無所属県民会議、日本共産党埼玉県議会議員団、無所属改革の会の4会派は、費用弁償のあり方の見直しを含めた改革をすすめる議会改革特別委員会の設置を、宮崎栄治郎議長に申し入れました。

 

 

以上