新型コロナウイルスによりひっ迫する保健所業務、その背景とは

新型コロナウイルス感染症が流行するようになって以降、感染拡大の波が来ると常に起こってきた問題が医療と保健所業務のひっ迫です。

医療のひっ迫に関しては、埼玉県は人口10万人あたりの医師数が最も少ないことから、医療体制にぜい弱性があるのは明らかです。

では、保健所業務がひっ迫する背景にはどのような事情があるのでしょうか。

保健所業務ひっ迫の背景にあるもの
その根底には、国・県が保健所を減らし続けてきたという問題があります。

国は終戦直後の保健所法を1994年に改正(97年全面施行)、地域保健法としました。
衛生環境の改善と民間医療機関の発展で、乳幼児が多く死亡するなどしていた時代が終わりを迎え、中心的役割を担ってきた保健所がその役割を終えたという声が出るような状況を鑑みてのことでした。
それ以降保健所の数は全国で半数程度に減少しています。

県内の保健所数の推移
埼玉県内の保健所の数を見てみましょう。
1997年には23保健所・4支所だった保健所ですが、2006年には半数以下の13保健所・11分室となり、更に2010年には分室が全て削減されてしまいました。
その後さいたま市・越谷市・川口市・川越市については市で保健所が設置されることになり、現状は13保健所・4か所となっています。

保健所・保健師を減らし続けてきたところに新型コロナウイルス感染拡大が加わり、2021年1月熊谷保健所職員の最長時間外労働は208時間にも及んだことが判明しています。

現状と今後の展望
その後過去最高となる38人の保健師増員を図るなど保健所職員の増加に努め、県庁からも保健所への応援職員を派遣していますが、未だ業務ひっ迫の解消には至っていないのが現状です。
保健所職員の増員はもとより、業務の保健所外分担などさまざまな面からのアプローチで、市民を守ることができる仕組みづくりが求められています。