格差社会における芸術・文化の役割ー可児市文化創造センター

IMG_01575月23日岐阜県可児市文化創造センターを視察しました。

名古屋駅から在来線で30分。のどかな田園風景の無人駅からタクシーで5分

広大な芝生と噴水、ガラス張りの建物が現れました。周辺とはうってかわりレストランやロビーには人があふれ、活気に満ちています。

 

衛紀生館長と懇談をしました。ー館長の主張については同センターのサイト「館長の部屋」もご参照ください。

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文化から遠い人にきてほしい

館長として、「日頃演劇とかに縁のない人に来てもらえるよう努力している」とのこと

障害を持ったひとや、シングルマザーのワークショップを開いています。「ワークショップで技術を身に着けてもらうというより、人間関係をつくってほしい」「みんなでお弁当を食べてもらう」

格差社会に、文化センターが果たす役割は

現在社会の最大の問題点を「格差」だと分析します。

英国のウエストヨークシャープレイハウスをみて、「このような施設が10あれば日本は変わる」と思ったそうです。芸術文化は富裕層のものという固定観念が日本には根深くありますが、シングルや障害者、学校中退など、貧困問題に芸術・文化が果たす役割がある、そう力強く語る衛館長

中退者の多い県立高校から相談を受けて、同校でワークショップをはじめ仲間づくりを進める中、中退者が劇的に減った経験を語ります。また、一方で「それでも中退者はなくならない。それは貧困という問題があるから」と、リアルな現実を見据えています。寄付を募って、就学援助を受ける児童たちの希望者に演劇チケットを贈りる活動。最近は、シングル家庭の親子両方を招く取組みも進めています。「文化を通じて、親子が会話をしてほしい」文化センターの役割を、地域の人々の関係づくりの場として位置付けています。

文化活動に客観的な評価を

この活動がなければ、いくら失っていたのか?

こうした、社会課題に応える文化活動について、現在日本財団などシンクタンクによる客観的評価を進めているとのこと。「たとえば高校を中退する人数を30人減らせたとする。高卒正規労働者の生涯賃金と、非正規労働者の障害賃金を比較し、その30倍が評価金額となります」この評価方法なら、福祉や教育施策を積極的に評価することが可能です。

埼玉の芸術劇場は偉業をなしとげた

2003年の指定管理制度導入により、全国の文化施設で職員の非正規化が劇的に進みました。衛館長によると2004年に44.8%だった非正規率が、2012年には66.7%に上っているとのこと。

これに対して、埼玉県の彩の国芸術劇場は、時間をかけて正規職員の比率を高め、ついに100%正規職を実現した、と衛館長は絶賛されました。館長はサイトでこう語っています「技術集積と市民の関係資本を経営資源としなければサービス自体が経年劣化することが自明である作品創造型や包摂型の劇場音楽堂等が「有機雇用契約」の職員の増殖に危機感をもっていないことに私はあきれるばかりでした」

館長は、彩の国芸術劇場を今年訪問されましたが、「竹内理事長の劇場環境へ向けられた人間を中心に据えようとする温かみのあるまなざしを感じます」とサイトで述べておられます。

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