6月定例会をふり返って 団長談話を発表

埼玉県議会6月定例会は7月7日、閉会しました。日本共産党埼玉県議団の柳下礼子団長が、今定例会をふりかえり、以下の談話を発表しました。

2017年7月7日
日本共産党埼玉県議団
団長 柳下礼子

6月定例会を振り返って

 

一 10件の知事提出案件に賛成、1件を不同意

党県議団は「平成29年度埼玉県一般会計補正予算」など知事提出議案11件のうち10 件に賛成し、「埼玉県虐待禁止条例」をはじめとする議員提出議案全てに賛成しました。教育委員選任については不同意としました。

一、金子正江県議に対する発言権侵害を抗議する

6月26日、日本共産党金子正江県議の一般質問開始直前に、公明党の石渡豊県議によって「金子県議の発言通告には不穏当な記載があり修正を求める」として休憩動議が提出されました。議会運営委員会の場で、公明党委員は「『共謀罪法』はまやかし・不穏当な呼称であり議事録に残すべきではない」と通告文言の修正を求めました。これに対し党秋山文和委員は「共謀罪」は新聞各紙、日本弁護士連合会、上田清司知事の定例記者会見でも使用されており、「共謀罪法」は広く国民に浸透している文言だとして修正を拒否しました。

公明党は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律か、改正組織犯罪処罰法と書くべき」と、共謀罪という文言削除に固執しましたが、最終的には議運委員長の「質問は通告文書どおりに行う」という提案を了承しました。議員の発言の自由が認められた意義ある決定だと考えています。

発言通告は発言の1日前の正午以降の変更が行われたことはありません。公明党の休憩動議は完全なルール破りです。この修正要求をめぐり議運が紛糾した結果、議会は29年ぶりに流会となり、傍聴者も多数集まっていたにも関わらず、金子県議の質問は中止となりました。翌日に質問は行われましたが、公明党のルール破り=金子県議の質問妨害には怒りをこめて抗議します。

今回の道理ある解決の陰には、県民の皆さんの良識ある世論と運動の力がありました。マスコミ各紙も翌日・翌々日の地方面で事態を正確に報道し、民進党・無所属は「議会からの表現の自由が失われる大問題」との代表見解も公表しました。このような流れの中、「共謀罪法」、という文言が通告に残り、県議の発言の自由が守られたのです。

一、「共謀罪」法、国保の都道府県化など質す

金子県議は、1日遅れの6月27日に一般質問を行い、共謀罪について堂々と知事の見解を質しました。知事は「共謀罪」法の成立過程について、「国会での審議が尽くされないまま、法案の採決に至ったことは残念に思っています」と答えました。

また、金子県議は、医療的ケアの必要な障害児者の支援や、地域包括ケアシステムの整備、臨時的任用教員問題などを取り上げました。特に来年4月に迫る国民健康保険の都道府県化にあたって、国保税の引き上げが行われればさらなる滞納を生み、国保財政は破たんするとして、国保被保険者の負担を増やすべきではないと質問。保健医療部長は財政の安定運営に触れながらも「制度改正に伴う被保険者の負担増は可能な限り避けることが望ましい」と答弁しました。

一、親学推進協会の教育委員は認められない

教育委員に、親学推進協会理事の後藤素彦氏を選任する人事案件について、党県議団は不同意としました。

同協会は理事長・会長を歴任する元埼玉県教育委員・高橋史郎氏が主宰する団体です。

不同意の理由の第1は、高橋氏が本県の教育行政に携わるべき人物ではなく、同氏の「親学」理論を広報啓発する同団体も本県の教育行政にふさわしくないからです。

同氏は帝国憲法や教育勅語を賛美し、歴史改ざん運動をすすめた「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長であり、本県の教育委員選任時に、県民の大反対運動があり、党県議団は不同意とした人物です。

また同氏の「乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する要因」との主張の非科学性が多数の発達障害者関係団体から批判・抗議を受けています。このような理論は特別支援教育推進に悪影響を与えかねません。

「自分が男であるか女であるかという意識を持ち、『男らしさ』『女らしさ』を涵養していくことは、・・・アイデンティティー確立のため必要不可欠」(『親学のすすめ』より)という同氏の持論は、性的マイノリティーへの差別是正教育を進めていこうとする、埼玉県教育行政と相容れません。こうした協会の理事は教育委員として認められません。

不同意の理由の第2は、家庭教育への啓発を活動の中心に据える親学推進協会員が、上田知事就任以来5人も選任されており、著しく偏っているからです。改正教育基本法に「家庭教育」が盛り込まれたとはいえ、「国、及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するための必要な施策を講ずるよう努めなければならない」と、国や地方公共団体に対する家庭教育の自主性を認めています。行政の家庭教育への介入は許されません。この点から、親学推進協会の教育委員が、今回も選任され、5人中2人を占めることに深く懸念せざるをえません。

以上