秋山文和県議一般質問答弁要旨

6月29日に秋山文和県議が行った本会議一般質問と答弁の全文です。
(これは、党県議団が作成したものです。)

1 戦争する国づくりは許さない
(1)日本を戦争する国に変える戦争法案は廃案を

31番秋山文和です。日本共産党を代表して一般質問を行います。
今年は戦後70年の節目の年にあたります。日本国憲法第9条は、国際紛争を解決する手段として、国権の発動たる戦争と武力の行使を永久に放棄することを宣言しています。その結果、自衛隊は創設以来、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出しませんでした。この日本国憲法の先進的な意義を、今こそ真摯にかみしめるべきときではないでしょうか、知事の見解をお示しください。

現在、国会で審議中の安倍政権による「平和安全法制」は、立憲主義を否定し憲法9条を根底から破壊する「戦争法案」そのものです。わが党は、日本を「海外で戦争する国」へと変えるこの法案は廃案にすべきと考えます。戦後日本の大転換を目論む戦争法案について伺います。
国会での質疑を通じて、戦争法案の3つの重大問題が明白となりました。
その第一は、自衛隊の活動地域を「戦闘地域」を含む世界的規模に拡大することです。安倍首相は「後方支援」イコール兵站活動を行うのであって武力行使に当たらないから、憲法違反ではないとしていますが、兵站活動が武力行使と一体不可分であり、軍事攻撃の目標となることは、世界の常識であり軍事の常識です。
第二は、形式上「停戦合意」がなされていても、なお戦乱が続く地域に自衛隊を派兵し、治安維持活動を可能とし、敵対勢力の「妨害排除」のための武器使用も認めていることです。3500人もの戦死者を出したアフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)などへの参加の道が開かれ、自衛隊員が血を流し犠牲となる危険性は極めて高いものとなります。
第三は、これまでの政府の憲法解釈を根底から覆し、日本が直接攻撃されていなくても集団的自衛権を発動して、アメリカの戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使に乗り出すことです。これまでアメリカの行った武力行使は、国連憲章と国際法に違反した先制攻撃がほとんどですが、日本政府はただの一度も「国際法違反」と批判したことはありません。この異常な対米追随の政府では、アメリカの言われるままに無法な戦争に参加していくことは必至です。ここに集団的自衛権行使の一番の危険があり、まさに、米軍と一体となって「戦争する国」となってしまいます。歴史を覆し「殺し、殺される」日本に変えてしまう。このような暴挙は断じて許すわけにはいきません。
先の衆院憲法審査会では、自民党推薦を含む3人の憲法学者がそろって「戦争法案」を憲法違反と断定しました。民主主義を無視した安倍政権の強権的な法案推進の姿勢への国民の批判は大きく、国民多数が「今国会での成立」に反対し、「説明不足」と感じる方は8割を超えています。今や日本中で「戦争法案」の廃案を求める声が日に日に高まり、本県においては5月31日、北浦和公園に埼玉弁護士会の後援で、1万人を超える人々が結集し、「戦争法案撤回」を求める大集会が行われました。
知事は首長として、725万県民のいのちとくらしに責任を負う立場にあります。故に今回の、日本を戦争する国へと変える戦争法案について、知事は県民に対して見解を明らかにする責任があります。知事の所見をお伺いします。

【知事】
秋山議員の御質問に順次お答えをいたします。
まず、「日本を戦争する国に変える戦争法案」についてでございます。
その中で、まず「日本国憲法の先進的な意義を今こそ真摯にかみしめるべきではないか」について見解を伺う、でございますが、私は、戦後日本の平和国家としての歩みの中で、憲法第9条が果たしてきた意義は評価されるべきだと思っております。
同時に、我が国の平和は憲法第9条だけで守られてきたわけではないということも考える必要があると思っております。
国際的な緊張が続く中で、いみじくも秋山議員も「創設以来、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していない」と評価されている自衛隊や、日米安保条約といった国家自衛のための現実的な枠組みの存在が、大きな役割を果たしていることも忘れてはならないのではないかと考えるところです。
次に、秋山議員の言う、日本を戦争する国へと変える戦争法案についてでございます。
国家の安全保障という国の専管事項に係る法制であります。現在国会で審議中でありますので、私がこの問題について結論めいたことを述べるのは、差し控えておきたいと思っております。
ただ、国会における論戦を見ていると議論がしっかりかみ合っていない印象を受けます。
世論調査を見ても法案の内容について国民の理解が進んでいるとは言えないと思います。
政府は国民に対してより丁寧に説明すべきと考えますし、野党も国民が知りたい点について、もっと論点を絞って分かりやすい議論をされることを望んでおります。
幸い与党政府においても、会期が大幅に延長される英断がありました。
高く評価すべきものと思います。
今後、慎重かつ丁寧な審議がなされることを期待しております。

(2)危険なオスプレイから埼玉の空を守れ

次に「危険なオスプレイから埼玉の空を守れ」についてです。
戦争法制と軌を一にして、全国の在日米軍基地の強化が急速に進められています。横田基地のオスプレイの配備もその一環です。
5月11日、米国政府から日本政府に対し、2017年から、順次CV-22オスプレイ10機を、横田基地に配備するという通報がありました。オスプレイは米海兵隊や空軍の特殊作戦部隊が運用している輸送機であり、その配備は米国が世界で引き起こす戦争のための基地強化と言わざるをえません。
また、過去重大事故を繰り返している危険な機種です。配備通報の直後の5月18日にもハワイで死亡事故を引き起こしております。このオスプレイ配備と事故に対して、埼玉県は、配備について関係自治体への説明、事故原因の直接説明を求めております。企画財政部長、自治体への説明の実施状況と内容をご報告ください。
埼玉県平和委員会の調査によると、2010年ごろから、横田空域を超える広範な埼玉県上空で、米軍機の低空飛行が頻発し始めました。米軍は2013年に大宮や熊谷などを含む広大な県内地域が、米軍輸送機訓練エリアとなっていることを公表しています。配備後は、この空域をオスプレイが飛ぶことは必至です。私は、欠陥機で危険、しかも米国の海外での侵略戦争のための輸送機であるオスプレイの配備は撤回すべきだと考えます。知事の見解をお示しください。
また横田基地にかかわる情報提供が、基地のある東京都と都内5市1町に限られている点ですが、少なくとも横田空域下にある入間市と埼玉県には、同様に説明すべきです。この点を防衛省に強く申し入れるべきです、企財部長お答え下さい。
なお、横田空域下の入間市には航空自衛隊基地も存在しており、市民は2重に基地負担をおっています。これまで基地騒音の定点調査を埼玉県は所沢市、狭山市等で行ってきましたが、同様に基地騒音に悩まされる入間市内でも行うべきと考えます。環境部長の答弁を求めます。

【知事】
次に、「危険なオスプレイから埼玉の空を守れ」についてでございます。
横田基地への米軍のオスプレイの配備については、国は日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、アジア太平洋地域の安定に資するものとしております。
また、オスプレイの運用の安全性は十分に確保されているとの見解は示しておられます。
安全保障に関することは国の専管事項であり、現時点で県から配備撤回を求める考えはございません。
しかし、米軍機の運用に際しては住民生活への最大限の配慮が必要なことは言うまでもありません。
従いまして県としては、配備に関する具体的な内容や安全性について地元自治体や県民の理解が得られるように、地元自治体と共に、国に引き続き十分な説明を求めてまいります。

【環境部長】
御質問1「戦争する国づくりは許さない」の(2)「危険なオスプレイから埼玉の空を守れ」のうち、基地騒音の定点調査を入間市内でも行うべきについて、お答えを申し上げます。
航空機からの騒音の影響はその飛行経路真下で大きく、経路から外れると影響が小さくなります。
観測結果を見ても、経路から横に数百メートル離れるだけで、大きな騒音の低下が見られ、飛行経路の西側では環境基準を満たしております。
なお、航空自衛隊基地に離着陸する飛行機は、西側に隣接する横田基地の空域を避けるために、入間市方向には旋回しないと北関東防衛局から聞いております。
このため、騒音の影響が小さくなる横方向にある入間市内での騒音測定は、現状では必要ないと考えております。

【企画財政部長】
御質問1「戦争する国づくりは許さない」の(2)「危険なオスプレイから埼玉の空を守れ」についてお答えを申し上げます。
まず、「オスプレイの配備に関する自治体への説明の実施状況と内容」でございます。
県と基地関連市町(しまち)で構成する埼玉県基地対策協議会が、5月20日に緊急要望を行ったことを受け、6月23日に北関東防衛局から県に対して、改めて説明がありました。
その内容は、横田飛行場へのオスプレイ配備の意義、安全性や騒音等について説明するものでございました。
なお、ハワイ州での事故については、米国側で原因究明中の段階との説明でございます。
次に、「横田基地に関する情報提供は、県と入間市に対して都と5市1町と同様に説明すべき」でございます。
横田飛行場は本県西部地域に近接しているため、オスプレイの情報に限らず、本県に影響が大きい場合には、北関東防衛局から県に対して適宜情報提供がなされております。
また、入間市だけでなく、飯能市、日高市などに対しても、適宜直接情報提供がなされていると承知しております。
県が国から受けた情報は、埼玉県基地対策協議会の構成市町(しまち)に情報提供しております。
県としては埼玉県基地対策協議会を通じて、基地関連情報を県、関係市町(しまち)に十分提供するよう、引き続き国に対して求めてまいります。

【秋山議員再質問】
・3市との協議を行い、オスプレイの横田基地への飛来や配備を行わないよう申し入れるべきと考えるが、見解を伺う。

【知事】
秋山文和議員の再質問にお答えします。
まず、オスプレイの問題でありますが、3市との協議をしっかりやりながら申し入れをしろということだと思っております。
基本的には国の専門領域でありますが、とにかく現実に住民が危険であるという認識は私たちもしているわけでございます。
従って十分な説明ができるようにということに関して、3市並びに私共は意見が一致しておりますので、今後も協議を重ねて必要に応じて防衛局の説明、あるいは場合によってはアメリカ政府の説明などをしっかり受けていきたいと思っております。

(3)教科書採択にあたっては、現場の自主性を尊重すべき

つづいて「教科書採択にあたっては、現場の自主性を尊重すべき」についてです。
一昨年9月、県立高等学校の教科書採択にあたって、教育現場に対する県議会による目に余る政治介入が行われました。特に検定合格済みの教科書を採択した8つの高校の校長まで呼びつけて再考を求めた文教委員会のやり方は、驚きとともに県民の批判を集めました。
現在、安倍政権に歩調をあわせて、各地の教育委員会に対して、先の大戦に無反省と批判のある育鵬社などの教科書採択を、地方議員や首長が求める動きがあります。このような戦争する国づくりに呼応する政治介入は、絶対に許されないとまず、申し上げます。
さて今年は県立特別支援学校と伊奈学園中学校はじめ、中学校の教科書が採択されます。
日本も賛成の上採択されたユネスコの「教員の地位に関する勧告」では「教員は生徒に最も適した教具及び教授法を判断する資格を、特に有しているので、教科書の選択にあたって・・・・主要な役割が与えられるものとする」とあります。
教育長、教科書採択にあたって、ユネスコの勧告をどのように受け止めるのか、また私は、教科書は教員の意見を最大限尊重して採択すべきと考えますが、教育長の考えをお示しください。

【教育長】
御質問1「戦争する国づくりは許さない」の(3)「教科書採択にあたっては、現場の自主性を尊重すべき」についてお答えを申し上げます。
まず、「教科書採択にあたって、ユネスコの勧告をどのように受け止めるのか」についてでございます。
御指摘の勧告は、昭和41年に採択されたものです。
この勧告には、教科書の選択について御指摘の文言がございますが、それには条件が付いており、我が国の実情や法制に適合した方法で取り組むべきものとされております。
私は、我が国ではこの勧告が尊重され、50年にわたり教科書採択が行われているものと受け止めております。
次に、「教科書は教員の意見を最大限尊重して採択すべき」についてでございます。
各教育委員会が、教科書を採択するに際しては、教育基本法や学習指導要領を踏まえ、子供たちの成長に最もふさわしい教科書か、その内容をしっかり調査していくことが重要でございます。
また、各教育委員会は、生徒と学校の実態を把握するとともに、学校からの意見も参考にしつつ、自らの権限と責任のもと、教科書を採択することが大切であると考えます。
県教育委員会におきましても、こうした点を踏まえ、教科書を採択してまいります。

2 介護報酬引下げによる影響調査を

次に「介護報酬引き下げによる影響調査を」についてです。
消費税増税が強行される一方、安倍政権による社会保障切り捨てが乱暴に強行されています。介護分野ではこの4月から、特別養護老人ホームの入所対象者を原則要介護3以上に限定し、要介護1,2を事実上排除する大改悪が行われました。その上、介護報酬の大幅削減で事業者が悲鳴を上げています。
私たちは、全県の介護事業者にアンケートを行いましたが、引き下げが「事業の存続にかかわる」という回答が65%を占めました。特に、大打撃を被るのが特別養護老人ホームです。党県議団は、6月15日、三芳町の特別養護老人ホームを視察しました。
そこでは、「特養の介護報酬は、基本報酬が約6%の減額です。4月からまだ3か月なので決算でどうなるかわかりませんが、基本報酬は、月150万円位減っています。」と経営の苦しさを語っていました。また「加算をとればいいとよく言われますが、日常生活継続支援加算を受けるには、要介護4以上の方の入所を増やさなければならず、職員の負担が増えます。また、処遇改善加算は、対象が、介護職だけで、看護職、ケアマネ、事務職、相談員、調理員には適用されません」と加算をとる難しさなども語っておられました。
そこで、伺いますが、第1にこうした現場の実態をつかみ対策を講じるためにも、早急に県として介護事業者への影響調査をすべきです。第2に職員処遇改善加算については、介護職に限定せずすべての職員に対象を広げるように国へ働きかけるべきです。第3に、県は介護福祉士養成施設の在学者で、将来県内の社会福祉施設等へ就職を希望する者に対して、月額5万円以内の修学資金貸付制度をはじめました。学校等にも周知徹底するなどし、利用者を増やすべきと考えますが、実績と今後の見通しについて、福祉部長の答弁を求めます。

【福祉部長】
御質問2「介護報酬引下げによる影響調査を」についてお答えを申し上げます。
まず、介護事業所への影響調査についてでございます。
県では、本年1月に公表された介護報酬のマイナス改定が事業所の運営に影響することが予想されたため、改定後の状況を把握する必要があると考えておりました。
4月に実施された改定後の介護報酬は、6月末から毎月各事業所に支払われてまいります。
実際の影響が現われるには一定の期間を要することから、今後適切な時期に事業運営への影響などを調査してまいります。
次に、職員処遇改善加算についてでございます。
県はこれまでも機会を捉え、処遇改善加算の対象を介護現場で働くすべての職員に拡大するよう国に要望してまいりました。
処遇改善により質の高い人材を確保し定着を図ることは重要と考えておりますので、引き続き国に要望してまいります。
次に、介護福祉士修学資金貸付制度の実績と今後の見通しについてでございます。
実績についてでございますが、現時点の貸付申請者は、介護福祉士養成校入学者352人のうち55人となっております。
県といたしましては、この事業は介護人材の確保に効果があると考えておりますので、介護福祉士養成校とも連携し、一人でも多くの方に利用されるよう、引き続き周知に努めてまいります。

3 国民健康保険の財政立て直しは、国の責任で

続いて「国民健康保険の財政立て直しは、国の責任で」についてです。
国保税が高すぎます!所得200万円の4人家族に36万円を超える保険税はもはや負担の限度を超えており、到底払えません。「運転資金の入金口座を差し押さえられて、事業が続けられなくなった」過酷な取り立てが、地元春日部市でも行われています。やむなく全国の市町村は3500億円にのぼる法定外繰り入れを行っていますが、これも限界です。
このような事態に対して、国は運営主体を2018年から市町村から都道府県に移すことによって打開しようと、県や市の負担も含めた約3400億円の公費投入の方針を示し、今国会で関係法案を通したのです。国は、この3400億円の公費投入で、「被保険者1人当たり、約1万円の財政改善効果」があると宣伝しております。
しかし、都道府県化によって、一人あたり1万円の保険料が下がるとは到底考えられません。
あと3年後の2018年の時点で、国保の被保険者のうちの高齢者は今よりさらに増加し、財政状況は悪化するのではありませんか。公費3400億円が投入されれば、この国保の財政の悪化が解決できるとお考えですか、保健医療部長お答えください。
また、3400億円の内、1700億円は「財政調整機能の強化」などを目的に交付されます。この中の多くが医療費抑制や保険料の徴収を条件に交付されるものです。これでは、むしろ、都道府県が医療費抑制や保険料徴収強化の監督役を担わされるだけです。
低所得者・高齢者が主体の国保財政の困難の原因は、国の財政負担の後退にあります。国民健康保険事業年報によれば市町村国保財政の総収入に占める国庫支出金の割合は、1984年に50%であったものが、2011年には25%となっています。
国保法は、第1条でその目的を社会保障と国民保健の向上とうたっております。
知事に伺いますが、社会保障としての国保の立て直しのために、80年代なみに国の財政負担を復活させるべきと考えますが、見解をお示しください。

【知事】
次に、「国民健康保険の財政立て直しは、国の責任で」のお尋ねでございます。
国民健康保険制度は、昭和33年に、保険料が半分、国の負担が半分という仕組みで始まりました。
その後、三位一体改革による税源移譲や国保制度の見直しが進められる中で、国保財政における市町村や県の負担が相対的に増えてきました。
国民皆保険制度を堅持するため、国民健康保険の財政の立て直しは、国も当然責任を持ってしかるべきであります。
この度の国保制度改革において、国と地方との協議の結果、平成30年度以降、赤字解消のため毎年約3,400億円の公費の追加投入が決まりました。
しかし、現在の国保は医療費の多く掛かる高齢者や低所得者層で構成されており、この構造的な問題を解決しない限り、公費投入は拡大し続けることになるのではないかと思われます。
平成30年度から都道府県単位に国保運営の規模が拡大されますが、 塩崎厚生労働大臣からは必要な財政上の措置については全国知事会の指摘を十分踏まえてしっかり取り組んでいきたいと回答はされました。
県としては、責任ある国保の財政運営を行っていくためにも、国に対して財政負担を求めてまいります。
秋山議員から80年代並みの国の財政負担を復活させるべきとのお話がございました。
しかし、私は、負担割合を単に昔の姿に戻すことではなくて、今回の制度改革を将来に向かって国民のための医療保険制度を再構築するための第一歩にしなければならいないのでないかと思います。
また、全ての医療保険制度における給付と負担の公平化を考えれば、将来は国民全てが加入し、国が一括して運営する医療保険制度の方が、より安定する、より優れたものになるのではないかと考えております。
その場合、都道府県ごとに医療費抑制へのインセンティブを持たせるようにすることも大切であります。
県としては、将来的には医療保険制度を一元化するよう強く働き掛けていきたいと思います。

【知事】再質問答弁
国保についてでありますが、ご案内のとおり現在、埼玉県下の市町村の総額で一般会計からの繰り入れが296億という形になっております。
したがいまして今後、県が主管する形になりましても、現実には窓口業務的なものは、市町村になっていますし、住民の健康全体を担っていくのも市町村ということでございますので、この国保だけで計算をしていくとなかなかうまくいきません。
したがいまして、健康長寿をはじめですね、いかにすれば医療費の抑制が可能になるのか、そういう総合的な判断もしなければいけませんし、また、国の財政においてもですね、困難なことは秋山議員だって、わかっている訳でありまして、全部国におっかぶせてですね、なんとにでもせいという話にはある意味ではなかなか責任を問うということも困難ではないかと思っています。
これはやっぱり県と市町村、そして国、共に協力して、国保財政をしっかりさせていく。また、県民、市民のですね、健康をしっかり守っていく。その上で、困難な課題についてもですね、国がしっかりとそうした補てんをしていくということをですね、今後も詰めていかなければならないと、このように考えております。

【保健医療部長】
御質問3「国民健康保険の財政立て直しは、国の責任で」について、お答えを申し上げます。
制度改革に当たり、国と地方との協議の結果、平成30年度以降公費負担を毎年約3,400億円追加投入することとなりました。
しかし、全国の市町村国民健康保険財政における法定外繰入金、いわゆる赤字補てん分は平成25年度で約3,500億円に上っております。
本県の場合で申し上げれば、約296億円が市町村の一般会計から特別会計に繰り出されております。
国の公費拡大分のうち、本県にどれくらいの額が配分されるかはまだ明らかにされておりませんが、ある程度の赤字補てんの効果はあるものと思われます。

しかし、様々な対策を講じても、今後とも医療費の増大が見込まれていることに加え、国保のかかえる構造的な問題もあり、3,400億円の投入だけで国保財政の悪化がすべて解決できるとは考えておりません。

4 埼玉県立小児医療センターの機能存続と医療型障害児入所施設の充実を

次は「埼玉県立小児医療センターの機能存続と医療型障害児入所施設の充実を」です。
4年前の6月、知事は県立小児医療センターを、さいたま新都心に移転し、さいたま赤十字病院とともに総合周産期母子医療センターを設立すると表明しました。党県議団は、せめて救急や入院など一部機能を存続すべきだと主張してきました。
新都心の新病院建設は進められていますが、率直に言って、現センター周辺の医療体制整備は取り残されております。
私は先日、伊奈町、蓮田市や春日部市などの患者家族や住民がつくっている「県立小児医療センター存続を求める連絡会」のみなさんと懇談をしました。周辺地域住民のみなさんは、「県立小児医療センターが移転してしまえば、NICU=新生児集中治療床がこの地域から1床もなくなってしまう。春日部や蓮田の産院で生まれた未熟児はどうしたらいいのか」と不安を募らせていました。
私はセンターを視察しましたが、先生は「未熟児はドクターカーで運ぶ距離が長くなればなるほど、死亡率も高まり障害も重くなる」と語っておられました。そこで知事に伺いますが、移転後、現センターの周辺の産婦人科で生まれる未熟児は、どこのNICUに運ばれるのですか、これまでの答弁のように、新都心のセンターに運ばれるのでは、死亡率も障害率も増大するのではないですか、お答えください。
私は移転を無理やり進めていく以上、知事にはセンターの周辺、とくに東部方面の周産期医療体制整備に責任があると考えます。わたしの地元春日部市立病院は建て替えを進めていますが、来年度竣工時に、NICU3床をスタートさせたいと頑張っています。しかし現在産婦人科医師が1人も確保できず、NICUをスタートさせる見通しが立っておりません。知事にお伺いしますが、移転を強行するなら県が責任をもって春日部市立病院の問題を解決すべきではありませんか。産科医を大学病院から派遣するなど思い切った援助をする意志はあるのか、お答えください。
次に、医療型障害児入所施設について伺います。
県は現在のセンターの敷地に、医療型障害児入所施設をつくり、重症児のレスパイトなどを行うとしています。40床という計画ですが、さらに大きく育てていただきたい。そこで病院事業管理者に伺いますが、社会福祉法人へ委託ときいておりますが、経営の困難は必至です。財政上も、医師や看護師などの人材上も、県が将来にわたって責任を持つべきと考えますが、お答え下さい。

【知事】
次に、「埼玉県立小児医療センターの機能存続と医療型障害児入所施設の充実を」のお尋ねのうち、現センターの周辺の産婦人科で生まれる未熟児が運ばれるNICUについてでございます。
本県は、周産期医療の充実を図るため、医療圏を越えた患者の受入れを前提に、広域的にNICUを整備してきました。
小児医療センターの移転を公表した平成23年度当時、県内のNICUは101床でございましたが、現在は121床まで増加しております。
さらに、第6次地域保健医療計画に基づき、移転後の小児医療センターに新たに整備される15床を含め、平成28年度までに150床を整備することにしております。
お尋ねの現センター周辺の産婦人科で生まれる未熟児については、基本的には、近隣の地域周産期母子医療センターに搬送されることになります。
具体的には、自治医科大学附属さいたま医療センター、さいたま市立病院などが考えられます。
さらに、重篤なケースになれば、さいたま新都心に整備される小児医療センターに搬送されるということになります。
また、平成23年10月から、受入可能なNICUの情報を把握し、最適な搬送先を選定する母体・新生児搬送コーディネーターを配備しております。
これにより、県内のハイリスク妊産婦や新生児の広域的な搬送を円滑に進めることができています。
平成26年度におけるコーディネーターの調整件数は、妊産婦で377件、新生児で25件、合計402件であり、円滑な搬送に寄与してまいりました。
引き続き、県全体として必要なNICUを確保するとともに、東部地区を含め周産期医療に支障のないように、万全を尽くしてまいります。
次に、春日部市立病院の医師確保の問題を県が解決すべきではないかということについてでございます。
産科医、小児科医の確保は極めて重要な課題であると考えており、県は研修医や医学生に対する資金貸与などを行い、医師の育成、確保に取り組んでおります。
平成14年から24年までの10年間で、小児科医は120名増加し、これは全国5番目でございます。
また、産科医は3名増加しておりまして、30道府県において減少している中、本県は全国第11位になっております。
春日部市立病院では、現在、同病院が関連大学を中心に懸命に医師派遣の要請を行っていると聞いております。
県では、県内の医師不足の病院に対し、大学医学部に寄附講座を設置して医師の派遣を受けることや、県外からの指導医・専門医を招へいすることへの財政的支援を行う仕組みを用意しております。

【病院事業管理者】
御質問4「埼玉県立小児医療センターの機能存続と医療型障害児入所施設の充実を」のお尋ねのうち、「医療型障害児入所施設について」お答えを申し上げます。

県では、小児医療センターの跡地を活用して、社会福祉法人等の運営による医療型障害児入所施設が設置できるよう検討しております。
施設の整備に当たっては、全国で同様の施設を実際に運営している法人に調査を行い、経営上の課題を整理してまいりました。
その中で、財政的・人的な面で県の支援を望む声も聞かれました。
一方で、全国に125ある医療型障害児入所施設のうち、約8割の99施設は民設民営方式で運営されております。
これらの施設は、現行制度の中で、高い使命感と日々の懸命な経営努力により施設を運営しております。
県といたしましては、運営法人による自助努力を基本としつつ、持続的に運営が可能となるよう効果的な支援を検討してまいります。

5 安心して子どもを産み育てられる埼玉へ、子育て支援の拡充を
(1)乳幼児医療費助成制度の対象年齢拡大を
(2)幼稚園の保護者の父母負担軽減補助の復活を

次に「安心して子どもを産み育てられる埼玉へ、子育て支援の拡充を」についてです。
少子化と子どもの貧困が社会問題化する中で、安心して子どもを産み育てられる環境をつくることが、大変重要な政治課題になっています。
中でも乳幼児医療費助成制度は子育て支援の主要な柱であると考えます。今年度、八潮市でも中学卒業まで医療費無料化が実施されたことにより、県下すべての市町村で、県制度を超えて助成制度が拡充されました。県と市町村がおおむね5割ずつ負担ということになっていますが、実態は、各市町村の子ども医療費助成予算における県補助金額の割合を見ると、春日部市の12%をはじめ、10%から15%にすぎません。市町村の上乗せによってこの制度は拡充されてきたというのが現実です。
関東近県では、対象年齢について、群馬、東京が中学卒業まで、栃木が小学校卒業まで、茨城、千葉、が小学校3年生までとなり、就学前までという埼玉県は大きく後れをとっております。昨年、党県議が中学校卒業まで助成している群馬県の例を示し拡充を求めましたが、その群馬について知事は「一人あたりの受診は増えている」と効果を否定されました。ところが、群馬の場合、中学まで拡充した2009年の、一件あたりの医療費補助額は1066円ですが、直近の13年度決算報告ではこれが1048円まで引き下がってきています。知事に伺いますが、受診は増えているが、補助額が減っているということは、軽症化がすすんでいるということではありませんか。群馬の事例はまさに、自己負担をなくせば、重症化を防ぎ医療費を削減できるという証しではありませんか。ぜひ、全国の先進として、この埼玉県の乳幼児医療費助成制度の対象年齢を、18歳まで拡充すべきです。知事の見解を求めます。

また幼稚園の保護者の父母負担軽減補助の復活も子育て世代の強い願いです。
4年前、一般の幼稚園保護者の県単補助が唐突に廃止になりました。以来、党県議団は毎年その復活を要望し、2月定例会には保護者の請願を紹介いたしました。その結果、2月定例会の予算特別委員会において「幼稚園の園舎の耐震化等の補助がひと段落ついた以降には、父母負担を軽減するための対策を充実させるべきである」との附帯決議が採択されました。
幼稚園舎の耐震化事業は今年度までの計画であり、今年度当初で約80%完了しております。幼稚園児の安全のためにも、ぜひ、今年度中に100%耐震化を完了すべきです。
また、幼稚園の父母負担軽減補助は、園舎の耐震化事業のスタートとともに廃止されました。園舎耐震化事業完了の翌年つまり来年度から復活すべきです。以上2点について、知事の見解をおたずねします。

【知事】
次に、「安心して子どもを産み育てられる埼玉へ、子育て支援の拡充を」のお尋ねのうち、「乳幼児医療費助成制度の対象年齢拡大を」についてでございます。
まず、自己負担をなくせば重症化を防ぎ、医療費を削減できるのではないかについてでございます。
群馬県の「子ども医療費助成」制度の実績を確認させていただきました。
平成21年度の対象年齢拡大以降、一件当たりの補助額の推移を見ると、増減を繰り返していますが、平成26年度までの6年間の平均は
1,058円と、どちらかと言えば横ばい状況ではないかと思います。
また、例えば通院患者が増えて、入院患者が減っているようであれば病気が軽いときに受診して重症化を防いでいるのでないかということがある程度言えるのかも知れません。
しかし、群馬県が公表しているデータは入院・通院の区別がなく、そうした傾向を読み取ることができません。
更に言えば、そのままにしておくと重症化するような病気に着目して無料化前後での医療費が比較されていないので、新たに対象となった子供たちの早期受診が促進され、重症化を防げたとは言えないのではないかと考えています。
もう少し詳しいデータによる分析が進められることが必要ではないかと思うところです。
次に、乳幼児医療費助成制度の対象年齢拡大についてでございます。
乳幼児への医療費の助成は、子育て家庭の経済的負担を軽減し、乳幼児の保健と福祉の増進を図るために、昭和48年に0歳児を対象に制度が開始されました。
私の知事就任時には通院は3歳児まで、入院は就学前まで拡大していましたが、その後も見直しをやってまいりました。
対象年齢の拡大については、平成16年度に4歳までの通院を、平成19年度には就学前までの通院を対象とし、現在では就学前までの入院・通院とも助成対象になっております。
また、所得制限についても、平成18年度と平成24年度の2回、制限額の緩和を行ってきました。
これにより補助対象を子育て家庭の82%から97%まで拡大しております。
この乳幼児への医療費助成制度の実施主体は市町村で、県は市町村に補助を行っているところです。
市町村の助成の水準については、どこに重点化するか各市町村が独自に判断され、決定しておられます。
医療費を推計すると、小学校就学前までが一人当たり年間およそ21万2千円、小学生は10万5千円、中学生は8万5千円となっております。
こうしたことから、県は、現状では医療費の多く掛かる小学校就学前までの子育て家庭をしっかり支援していくことを政策としております。
なお、この制度は全国で実施され、子育て支援のナショナルミニマムとして真に必要と考えられる年齢までは国が統一した制度として実施すべきものではないかと考えております。
今後とも政府要望をはじめ、様々な機会を捉えて、国に対して制度の創設を要請してまいります。

【知事】
次に、「幼稚園の保護者の父母負担軽減補助の復活を」についてでございます。
まず、幼稚園舎の耐震化は平成27年度中に100%完了すべきについてでございます。
県では、耐震化促進のための補助制度を平成23年度に新設し、その取組を支援してまいりました。
平成27年4月1日の時点で80.6%の幼稚園が耐震化を完了し、今年度予算において、県単独補助で37園、82棟分計上しています。
このほか、現段階では、国庫補助でも15園、15棟が措置される予定でございます。
個別の事情により耐震化が遅れている幼稚園もありますので、残念ながら平成27年度中に完了することは厳しい状況でございます。
しかし、園舎の耐震化は子供たちの命に関わる喫緊の課題でございますので、引き続き、早期の耐震化に向けた支援を行ってまいります。

次に、幼稚園の父母負担軽減補助は園舎耐震化事業完了の翌年である平成28年度から復活すべきについてでございます。
父母負担軽減の補助につきましては、多くの市町村では、就園奨励費補助として国の基準に独自に上乗せし、補助対象を拡大したり補助額を増額して保育料を軽減してきました。
県におきましても、平成15年度から、保護者の失業など家計急変世帯への補助を開始し、平成23年度から補助額を大幅に引き上げ、保育料の実質的な無償化を図っております。
平成22年度に一律4千円の保育料軽減補助を廃止しましたが、その財源を大幅に増額して耐震化や預かり保育への支援を行っております。
今後とも、安心して子供を産み育てられる環境整備を図るため、まずは、耐震化の早期完了に努め、その後、総合的な子育て支援策の更なる充実に取り組んでまいります。

6 児童養護施設への支援拡充を

続いて、「児童養護施設への支援拡充を」についてです。
今年4月現在、県内22か所ある児童養護施設に1278人の児童が暮らしています。入所児童のうち被虐待児が5~6割にのぼり、知的障害児など特別な配慮が必要とする児童も増えています。一人ひとりの状況に応じたきめ細かなケアができるよう、大規模施設については一刻も早く小規模化を進めるべきだと考えます。そのためにも、今後もユニット型施設をはじめとした施設建設を進めるべきだと考えます。
先日、私はさいたま市内と春日部市内の児童養護施設を訪問しました。どの施設も子どもたちのために小規模化に取り組んでいますが、国は措置費の単価を小規模施設に有利にしたり、小規模施設加算をしたりして誘導しています。そのため大規模施設は経営的に苦しい実情があります。そこで福祉部長に伺いますが、小規模化の中で生まれる大規模施設の困難について、丁寧に相談に乗り、柔軟に対応していただきたい。また、国に対して、措置費の単価引き上げを引き続き強く申し入れるべきです、この2点について答弁を求めます。
次に児童養護施設入所児童への進学支援について伺います。
国の調査では、児童養護施設の入所者で高校卒業後進学する人は約2割です。安定した就職先を確保し、貧困の連鎖をたちきるうえで、入所児童の大学等への進学の機会を保障することは重要です。県は養護施設を卒業し進学した若者のために、「希望の家」という住宅支援事業を始めましたが、ぜひ積極的に広報すること、すべての希望者に応じられるように今後拡充すべきと考えます。福祉部長お答えください。
長野県では、今年度から「長野県飛び立て若者!奨学金」制度を月5万円の給付型として創設しました。県でも独自の給付制奨学金制度を創設すべきと考えます。また大学進学自立生活支度費は、進学時27万円程度を支給する制度ですが、これを拡充するよう国に要望すべきです。2点、福祉部長の答弁を求めます。

【福祉部長】
次に、御質問6「児童養護施設への支援拡充を」について、お答えを申し上げます。
まず、「大規模施設の小規模化に伴う対応について」でございます。
国は、児童養護施設をより家庭に近い環境とするために、小規模化を進めております。
児童養護施設の小規模化に当たっては、建物の改築や職員配置など、多くの課題があります。
このため、県では各施設の実情をしっかりと把握し、段階的に小規模化を行う事例や資金計画について助言するなど、丁寧に対応してまいります。
次に、「措置費の単価引き上げについて」でございます。
最近の傾向として、児童養護施設には虐待などにより、複数の職員によるきめ細やかな対応を必要とする児童が多くなっております。
施設からは職員の充実が図れるよう、措置費の引き上げを求められております。
県といたしましては、措置費の引き上げについて、引き続き国に要望してまいります。
次に、「希望の家事業について」でございます。
この事業は、児童養護施設を退所した児童が大学などへ進学した場合に、住居を低額で提供したり、生活の支援を行うものです。
現在、職員が県内全ての児童養護施設を訪問し、事業の周知を行うとともに、児童の進学先などの希望を詳細に聞き取っております。
今後とも児童の意向を確認し、できる限り希望に応じられるよう取り組んでまいります。
次に、「独自の給付型奨学金制度の創設」についてでございます。
児童養護施設の退所児童を含む子供の貧困対策は、全国的な課題となっております。
給付型奨学金の創設については、全国知事会が国に要望しておりますので、今後、国の動向を見極めて、対応してまいります。
最後に、「大学進学等自立生活支度費」についてでございます。
親からの支援を受けにくい児童が進学するために、必要な費用を支援することは極めて重要です。
県といたしましては、大学進学等自立生活支度費の充実について、引き続き国に要望してまいります。

7 大雪被害農家の再建のために

次に、大雪による被災農家の再建について伺います。
今年2月の予算特別委員会で、わが党議員が大雪による被災農家への補助金支払いの見通しについて知事にただしたところ、「7月頃には全てのハウスが再建を完了し、そして完了後には早期に農家へ補助金が支払われる」とのお答えでした。
農林部長に伺います。ハウス再建の補助申請をした農家のうち、すべてのハウスが再建完了し補助金を支払った件数、一部のみ再建が完了し補助金を支払った件数、未払いの件数、並びに全県の補助金の支払い額をお答えください。さらに、大雪被害から再建をめざす農家は最後の1件まで支援すべきと考えますが、今後の見通しについてお答えください。
党県議団は6月11日、被害の大きかった深谷市の再建状況を把握するため、大里農林振興センター、深谷市、被災農家を訪問し、現地を調査しました。被災農家からは「再建費用の9割の助成というが、実際の再建費用の6割程度にしかならない」「10年間の営農継続が条件だったので、ハウス栽培をあきらめ、露地栽培に変更した」などの声が寄せられました。 これら被災農家の声に耳を傾け、今後の教訓とすることは大切です。
とりわけ職員体制の問題は重要です。「雪害による廃業ゼロ」を合言葉に農家支援やハウス業者不足の解消に懸命に力をつくした大里農林振興センターの話を聞き、県職員の役割の大きさを実感しました。しかし、県は10年間で農林部職員の定数を1214人から888人に減らしました。これは全部局の2倍の削減率にあたります。これでは、埼玉農業を守ることも、様々な農業被害に、より迅速に対応することもできません。埼玉農業を支える農林部職員を計画的に10年前の水準にもどしていくべきと考えますが、知事の答弁を求めます。

【知事】
次に、「大雪被害農家の再建のために」のお尋ねのうち、農林部職員を10年前の水準に戻していくべきについてございます。
平成26年2月の大雪被害に際して、県職員の対応は心強い支えとなったという農家の声も私は聞いています。
災害対応だけではなく、産地間競争に打ち勝つ儲かる埼玉農業の実現に向け、しっかりとした知識や技術を持った職員の育成を進めていく必要がございます。
農林部職員については栽培技術や農業経営などの専門的な研修や6次産業化のノウハウを学ぶ派遣研修などを行いその能力アップに努めております。
行政組織はともすれば肥大化する傾向があります。
農林部についても、研究分野の選択と集中による試験研究体制のスリム化や農家数の減少に応じた職員配置の見直しなどを進めてきました。
一方、スリム化だけではなく、課題に応じて職員の機動的な配置を行い、重点的に取り組む分野には厚く人員を配置してまいりました。
例えば、農産物に関する放射性物質問題への対応のための増員を行ったり、暑さに強い「彩のかがやき」の品種改良を急ぐための増員なども行ってまいりました。
単純に10年前の水準に戻すのではなく、引き続き職員の能力向上を図るとともに、真に必要な仕事は何なのか常に見直し、農業者をはじめ県民に役立つ農林部組織をつくってまいります。

【農林部長】
御質問7「大雪被害農家の再建のために」についてお答え申し上げます。
まず、補助金の支払い額ですが、今回の大雪被害で農業用ハウス等の再建を申請した件数は、2千850戸でございます。
そのうち、平成27年5月末で、全ての再建が完了し補助金が支払われた農家数は1千852戸、一部のみ再建が完了し補助金が支払われた農家数は178戸、未払いの農家数は820戸となっております。
補助金の支払い額は、国、県の補助金176億円のうち、平成26年中に87億5千万円が市町村に支払われ、88億5千万円を平成27年度に繰り越しさせていただきました。
この繰越額のうち、7月末までに32市町からの請求に基づき、補助金29億6千万円を支払うこととしております。
ハウス等の再建は、現状復帰が原則ですが、農家の判断でパイプハウスから鉄骨ハウスにするなど、機能強化を図った場合には、補助率が低下しております。
次に、今後の事業完了の見通しについてでございます。
農業用ハウスの再建にあたっては、依然、作業員が不足しております。また、畜舎などの建設では行政手続きに時間を要する事例も見られます。
このため、国が目標としていた7月末の事業完了は難しい状況となっております。
県といたしましては、農業用ハウスは概ね本年の秋までに、また、畜舎など全ての施設が平成27年度中に再建し、補助金の支払いが完了するよう全力で取り組んでまいります。

8 春日部駅付近連続立体交差事業について

次に「春日部駅付近連続立体交差事業について」お尋ねします。
東武伊勢崎線と野田線は春日部駅で交わりますが、駅付近には、混雑時1時間当たり40分間も遮断している「開かずの踏切」が複数存在し、特に県道さいたま春日部線では1時間でわずか2分間しか開かない状態にあります。加えて鉄道が市の中心市街地を東西に分断しているため、まちづくりの障害となっています。そこで春日部駅を中心に総額550億円をかけて鉄道を高架化し、踏切を10か所なくして交通渋滞と踏切事故の解消、および分断された市街地の一体化をはかる、というのが事業の概要です。2005年度に国の着工準備採択を受けています。
しかし以来10年を経た現在まで、工事着工の前提となる都市計画決定もせず、また決定の見通しさえ明らかにしていません。春日部市民は「一体どうなっているのか」「県はもうやる気がないんじゃないか」と不信感を募らせています。鉄道高架事業は大きな事業ですから、今すぐ都市計画決定をしたとしても完成まで早くて15年、長引けば20年以上となってしまうのではないでしょうか。このまま、見通しを明らかにしないまま推移させては、県・市の行政に対する市民の信頼は失われてしまいます。要は県が責任を持って推進するのかしないのか。そこが肝心なのです。事業の見通しについて知事の答弁を求めます。
また県土整備部長には、第1に何が障害で都市計画決定ができないのか。第2に今年2月に「公共事業評価監視委員会」に提出した評価概要資料には、事業期間について2年後の平成29年から38年までの10年間と記載があり、これは都市計画決定ののち事業開始が29年度になると考えてよいのか。第3に、事業費の県市の負担割合は従来の街路事業と同じと考えてよいのか、3点を伺います。

【知事】
最後に、「春日部駅付近連続立体交差事業について」のお尋ねのうち、事業の見通しについてでございます。
春日部駅周辺の道路事情や鉄道事情を考えれば、春日部駅付近の連続立体交差事業の重要性は、県として正しく認識しております。
御案内のとおり、この事業は莫大な費用が見込まれている大規模な事業でございます。
このため、投資に見合う効果を最大限に引き出すため、事業着手前に市のまちづくり計画との整合性などについて検証しなければなりません。
財源の確保や受益に応じた適切な負担、工事中の影響や事業期間の長期化による事業費の抑制などについても、十分に事前に検証が必要です。
一方、市の総合振興計画では、平成29年度の事業認可を目標に掲げておりますので、できるだけ課題解決を急ぐ必要があると考えております。
昨年8月に「春日部駅付近連続立体交差事業促進期成同盟会」から要望をいただいた際に、県と市の幹部職員による検討会議を設立して、もっとペースを速めて会合を行えというような指示をさせていただきました。
それまでのペースが、私から見れば遅いという考え方をもっておりましたので、そのように指示をしました。
現在、まちづくりの課題などについて春日部市とともに検討を進めております。
その結果を踏まえて、都市計画決定に向けていきたいと考えております。

【県土整備部長】
御質問8「春日部駅付近連続立体交差事業について」お答えを申し上げます。
まず、何が障害で都市計画決定ができないのかでございます。
この事業は多額の事業費を要し事業期間も長期となるため、都市計画決定に向けて、まちづくり、財源の確保、事業期間の短縮という3つの課題を解決する必要がございます。
これらの課題を解決するために、春日部市とともに検討会議において、市のまちづくり計画を確認するとともに東武鉄道との調整を進めております。
まちづくりの実現性と効果や適切な負担による財源の確保、事業期間の短縮などが可能であることを確認したうえ、都市計画決定に向かうべきと考えております。
次に、事業開始の時期についてでございますが、市の総合振興計画で平成29年度事業認可と位置付けていることを踏まえ目標を設定しております。
まずは課題の早期解決を図り、平成29年度から事業が開始できるよう取り組んでまいります。
次に、県市の費用負担割合についてでございます。
この事業の費用負担構成は通常の街路事業とは異なり、鉄道事業者の受益に応じた負担を差し引いた事業費の55パーセントを国、その残りが県と市の負担になります。
県市の負担割合は、受益の程度などを総合的に勘案し、両者で決定することになりますので、都市計画決定に向けた課題の解決を図るなかで検討してまいります。

【秋山議員再質問】
・平成29年度に着工ということを知事の権限で確認出来るのか、またそのつもりでいるのか伺う。

【知事】
春日部の駅付近連続立体交差事業でございますが、基本的には市の総合振興計画で29年度の事業認可を目標にしています。
それに合わせる形で、県とそして国と、さらにこの一番ポイントになる東武鉄道が現実に土地を持ったりしている訳でありますから、この東武鉄道との関係のなかを調整しなければなりません。
一定程度の国と県、市の財政負担の割合は決まっていますが、言わば東武鉄道もこの立体事業について、大幅な利益を得る可能性が高い訳であります。
何らかの形で東武鉄道にも、そうした負担について関与していただくことも重要な事だと思っています。
この点についても、実は話し合いをしておりますので、こうした点についてもご理解を賜りたい、こんな風に考えるところでございます。

9 一日も早く埼玉県内に「公立夜間中学」設置を

最後に「一日も早く埼玉県内に『公立夜間中学』設置を」についてです。
中学校夜間学級いわゆる夜間中学は、戦後の混乱期に様々な事情で義務教育を修了できなかった人たちを対象に始まり、今日では、不登校・引き揚げ帰国者・外国人らの大事な学びの場となっています。現在、公立の夜間中学は全国に31校ありますが、県には1校もないため、都内の学校に通わざるを得ず、そうした生徒は延べ1000人を超えます。
一方で、1985年開設の川口自主夜間中学は、無償ボランティアに支えられて今年30周年を迎え、今月9日には超党派による「夜間中学等義務教育拡充議員連盟」の国会議員が授業を視察し、党県議団も参加しました。
生徒やスタッフ、卒業生らとの懇談では、埼玉県内に住む現在教員の女性が発言されました。「小・中学校時代に不登校となり学齢期を過ぎてしまった。悩み苦しんでいた時、都内の公立夜間中学に出合い学べたことで今の自分がある。ぜひ、埼玉県に公立夜間中学をつくって欲しい。」また埼玉での設置を願う皆さんからは、「学齢超過の人の県内公立中学校への編入を認めてもらいたい。」「都内に通う生徒に就学援助が支給されるようにして欲しい」など切実な要望が寄せられました。
昨年12月議会で村岡議員が、埼玉県内への公立夜間中学設立を求めたのに対して知事は、「国の動きの進展に対応できることが大切」としつつ、「出遅れがないように整理しておこうということだけはしっかり指示をしております」との答弁でした。教育長に伺いますが、今日までどのような取組みを行ったのでしょうか。お答えください。
文部科学省は本年度の「中学校夜間学級の充実・改善等への取組事業」予算を、前年度比3倍強の1000万円へと増額しました。60万円が一単位です。本県はまだこの予算の申請をしていないと伺いました。国のこの予算を活用して、公立夜間中学設置を積極的に推進していただきたい。教育長の答弁を求めます。
以上です。

【教育長】
次に、御質問9「一日も早く埼玉県内に『公立夜間中学』設置を」についてお答えを申し上げます。
まず、昨年12月定例会以降の取組についてでございますが、平成27年2月、教育局内に「中学校夜間学級設置検討会議準備委員会」を立ち上げました。
この準備委員会は、これまでに2回開催し、中学校夜間学級設置に関する課題の整理などを行っております。
次に、国の予算を活用して、公立夜間中学設置を積極的に推進してはどうかについてでございますが、この予算は国が地方に検討を促すためのものであります。
本県では、既に準備委員会を立ち上げ、情報収集をするなど調査を独自に進めております。
県教育委員会といたしましては、引き続き国の動向を注視しつつ、具体的な方向性が示された場合に対応できるよう、調査・研究に努めてまいります。