稲葉一将
名古屋大学大学院法学研究科教授
講師より
「マイナンバー制度は、デジタル社会を支える情報連携の共通基盤と位置づけられている。この共通基盤によって、さまざまな主体が、官民をこえ、分野をこえ、国と地方もこえて連携し、一つのネットワークでつながることが意図されている。その意味することは何か、住民や自治体にとって何が問題かを明らかにする。」
〈この講義のテキスト〉
講義は、マイナンバー制度のそもそも論を、法律や国の資料によって改めて確認することから始まりました。
制度が ①マイナンバー②マイナンバーカード③マイナポータルの3つから成り立っていること。
マイナンバーの目的が異なる団体が保有する個人情報の共有にあること。
マイナンバーカードの公的個人認証制度が重要であること
マイナポータルは行政の総合窓口機能を持つが、ここにLINEなどの民間事業者が深くかかわっていることなどが確認されました。
この3制度の連携と機能の拡大の中で起こることは、
↑で「講師より」にある通り
「 さまざまな主体が、官民をこえ、分野をこえ、国と地方もこえて連携し、一つのネットワークでつながることが意図されている。」ということです。
このことに、どんな問題があるでしょうか。
講師は、アメリカにおけるグーグルやメタのように、情報収集が民間巨大組織に行われてきた国と違い、日本は情報収集や蓄積が行政が担ってきました。今これを民間に「オープンデータとして提供する国家施策が推進されているのです。
講師はその先にある電子政府においては、守秘義務などを有する公務員制度の解体があるとします。
こうした未来に対し、講師から呼びかけられたのは「高齢者が電子申請をあきらめてしまう」など公務員が必要とされる場面をひとつひとつ確認していく作業が大切ということでした。
この度の講義を拝聴して、マイナンバー制度を遠望した思いで、これほどの壮大な意図があるとは想像していませんでした。
資本主義社会の発展は、人類にとって大きな恵みをもたらすとともに、人間疎外を生み出していく。
人間らしく、優しく、発展する未来に向けて今後も常に問題提起していく必要性を強く感じました。