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予算特別委員会における守屋ひろ子議員の締めくくり総括質疑(大要)
2006年3月16日

企業誘致問題と地域経済の振興について

(1)企業撤退と地域経済への影響について

守屋ひろ子委員
 特別委員会でも報告がありましたが、企業誘致大作戦でこの14ヶ月の間に2400件を超える企業訪問があり、98件の企業立地に成功したということで、職員の努力には敬意を表するものです。
 しかしその一方で、企業の県外流出も問題になっています。なかでも、音響メーカーのパイオニア所沢事業所が閉鎖されることが明らかになって、地元では大きな問題となっています。
 そこで知事にお聞きしますが、パイオニア所沢事業所の閉鎖による雇用や下請中小企業などへの影響について、県は把握しているのでしょうか。把握しているのなら、その内容について明らかにしてください。また、移転後の跡地利用について県は何か情報を得ているのか、併せてお伺いいたします。知事お願い致します。

上田清司知事
 まずパイオニア所沢事業所の閉鎖がございましたので、企業誘致推進室の職員が東京・目黒のパイオニアも含めてですね、事情把握に行ったところでございます。ただあの、十分把握したかどうかということについて言えば、検討を進めておられますので、こうなったという話にはなっておりません。約2千人の再配置の対応については、まだつまびらかにしていただいておりません。県内の中小企業下請取引についてもですね、埼玉県中小企業振興公社で様々な相談に応じているところですが、パイオニア所沢事業所の閉鎖に係わった形での相談はないと伺っております。これからも、産業労働センターもございますので、そちらを通じて必要に応じて地域における状況を把握したい、このように思っております。

守屋委員
 私どもが得ている情報では、所沢事業所の従業員は正社員が約1400人、派遣・請負社員が約600人で、所沢、川越の事業所の関連企業は約400社だと聞いています。
 これだけの従業員と関連企業をもつ事業所が閉鎖となれば、地域の雇用と経済に及ぼす影響は計り知れません。第1に、退職を余儀なくされる従業員が相当数にのぼるとみられること。第2に、県内の下請関連企業への影響が大きいこと。第3に、周辺の商店街や地域経済に与える影響が考えられることです。
 そこで、知事にお聞き致しますが、 所沢市では助役が1月24日にパイオニアの本社を訪れて、事業の継続を働きかけるとともに工場跡地については市のまちづくりの発展につながるような配慮を求めたと聞いていますが、県としても、パイオニアに対して所沢事業所の事業活動の継続を働きかけるべきではないですか。
 また、事業所が撤退した跡地については、大型商業施設の進出が予定されているようだという情報を聞いております。もし、そうなると周辺の商店街など地域経済に与える影響が大きくなります。
 事業所は準工業地域なのですから、跡地については、県が工場誘致を斡旋するなどの対策が必要ではないでしょうか。 知事、お伺い致します。

上田知事
 確かに、移転の跡地利用についてですね、何らかの形で県が先導的にですね、いろんな形で引っ張っていける部分があるといいんですが、まだ現実にはパイオニアの方から現在検討中であるという回答しか得ておりませんので、そこまで引っ張っていってない現状がございますので、もう少しですね、概要が見えたらその時点で、いまご指摘頂いた方向でですね、どれだけ出来るかはともかく、ひっぱっていければいいなと思っております。
 もちろん、基本的にはもう少し所沢市の方の動きと合わせていければいいなと思っております。

守屋委員
 いまの知事の答弁ですと、最終的にはね、企業の経営判断ということになるわですけど、やはり企業が事業所をたたむとか、縮小するといった場合には、関係する自治体にはきちんと情報を開示するという、これが企業、とりわけ大企業の社会的責任ではないかと思うんです。
 事業所の事業活動の継続を知事自らパイオニアに対して働きかける考えはないのですか。また、パイオニアに対して情報の開示を求めるべきと考えますが、知事の答弁をお伺いいたします。

上田知事
 基本的には所沢市がそのような対応をしておりますので、それと合わせる形でですね、例えば斉籐市長の方から知事も乗り出せとかですね、そういう話しになれば、ご指摘のような対応をしたいと思っておりますが、現在のところはそこまで準備をしておりません。

守屋議員
 私は関係する自治体に情報を開示するというのは大企業の社会的な責任であるということを申し添えて、次に移らせて頂きたいと思います。

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(2)企業誘致について

守屋議員
 次に、企業誘致についてお聞きします。
自動車部品メーカーのカルソニックカンセイ(株)が、本社と研究所をさいたま市に移転するというので、県は急きょ県内に大規模な研究所を新設する企業に対して10億円を限度に補助金を交付する制度を4月に創設するとしています。
 そこでお聞きしますが、なぜ研究所に対する補助なのか。カルソニックカンセイの場合、地元の雇用効果はどのくらい見込まれるのか。交付額を10億円を限度としたのはなぜか。補助要件を初期投資額が100億円以上あるいは常用雇用1500人以上とした根拠は何ですか。知事にお伺いします。

上田知事
 まず、カルソニックカンセイ誘致の経過のなかでですね、さいたま市が10億円の補助制度を準備しておいたこと、さいたま市と共同で埼玉県がやったという経過のなかでですね、同等の支援をしなければならないだろうという判断を、記者会見の時に表明させて頂きました。どのような仕組みで、そうしたさいたま市と同等の支援策が必要かということに関して、私どもで内部でしっかり研究しましたところ、一般的にいえば単純な工場よりもですね、研究所が立地することによって、工場等の生産施設が集積する傾向がでてくると。したがって波及効果が高いと、こういう波及効果は、当然これはまた雇用効果・経済効果につながるということで、研究所に絞った形で10億円を限度とする補助制度を作ったところであります。
 そして、そうした雇用についてのですね、効果はどのくらい見込まれるのかというご質問でありますが、業務を開始する平成20年、カルソニックカンセイ本社並びに研究センターがさいたま市内でスタートする20年には、約2500人の方が従事すると報告を聞いております。これは直接的なものでございますので、いま申し上げましたように、研究所は当然それに関連する施設、工場等が集積していきますので、間接的にはそれ以上のものも含まれると、このように考えています。

守屋委員
 いま、知事に答弁して頂きましたけれども、カルソニックカンセイは、平成15年9月に大宮工場を閉鎖したばかりなんですね。それから2年後に本社と研究開発センターの移転計画が発表されたわけです。カルソニックカンセイは当初から本社と研究開発センターの移転を前提に大宮工場の移転を進めたのではないでしょうか。
 そうだとすれば、そのためにわざわざ自治体が「誘致」を理由に補助金を出すというのは大変に理解に苦しむものです。
 また、補助の対象を研究機関の誘致に限定したことも、カルソニックカンセイのための補助制度という印象を強くするんです。
 (産学連携の強化とか、優秀な人材の確保とか)いろいろ理由を述べておりますけれども、地元雇用とか、地域経済への波及効果が十分検証されているわけではありません。
 地域に住む人がカルソニックカンセイの本社に電話を致しまして、地元雇用についてお尋ねしたところ、「地元雇用はない」という返事だったというので大変憤慨されておりました。こうした企業に10億円もの補助金を出すというのは、到底県民の理解を得られないと思いますが、改めて知事の見解をお伺いいたします。

知事
 ご承知とは思いますが、関東精機という旧工場があり、そしてその後いろいろな再編成があって、カルソニックカンセイという日産グループのなかで最大の部品メーカーができた経緯があります。その中の大宮工場がいったん閉鎖されたと。今度くるのは大宮工場をつくるわけでもなんでもありません。本社と研究所が中野から移転するということでありまして、全く事情が違う話を混同されてはいかがかなと私は思います。
 なお、だれがどなたに電話したのか、まったくそういう趣旨も分からずじまいのまま、雇用は全くないなんていう、そういうことを言っていれば、カルソニックカンセイが相当不愉快な思いをすると思いますので、もし事実関係があれば、ぜひですね、私どもに教えていただき、そうしたことでまた改めてですね、できるだけ地元でですね、雇用関係が生じるように要請をしたいと思いますので、そうしたことについてもよろしくお願いしたいと思います。

守屋委員
 なぜ、ここまで言うかと言いますと、さいたま市の都市計画事業の日進東土地区画整理事業というのがありまして、ちょっとこれお見せします。(資料を掲げる)このなかで業務用地というのがあるんですが、これはカルソニックカンセイの土地なんですね。ですから先ほど話したように、平成15年9月に大宮工場を閉鎖して、それから2年後に今度は本社と研究開発センターが移転されるという、この期間の中で土地区画整理事業がされて、そのなかで5者の地権者の方たちが話し合って、さいたま市も入って、この区画整理事業が進められてきたんですよ。そして16年には、地元で説明会も行われているんです。こういう流れのなかでは、明らかにこれは業務用地に、カルソニックカンセイが本社とこういう研究所をつくるという方向で進めてきた。こちらのカンセイは児玉とか吉見ですか、ちょっとあれですが、そちらのほうに工場があるんですね。だから当然、そこの工場がくるということはないんですよ。2年前に移ったときはその工場の方へみなさん移転されているわけですから。それで今回この業務用地で、土地区画整理事業を行ってきちっとしてから、こちらに移るということでありますから、これ計画的に進められた中身じゃないかなとしかとらえられないんですね。そういう点では、いま企業に対する支援という点では、大企業より難しい経営状況におかれている中小企業や地場産業への支援こそが、求められているように思います。
 それでもなお、企業の誘致に補助を出すというのであれば、県内の雇用を優先することや、事業の撤退や縮小にあたって、地元の自治体との事前協議を義務づけるなど、企業の社会的責任をきちんと、補助要綱に明記するようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか、知事お伺いします。

知事
 まず区画整理事業は、さいたま市の事業でありまして、埼玉県の事業ではございません。また児玉・吉見に工場があることも事実でありますが、横須賀市にもあり厚木にもありですね。なおかつ日産グループの本社が横浜市にもあるよいう状況の中でですね、それ相応にいろんな条件を考えられて選ばれた訳でありまして、既定の事実のなかでそうした事業が展開されたというふうには受け止めておりません。
 また10億円の補助制度を作るぐらいであれば、中小零細企業にももっとという話でありますが、ご承知の通りスーパーサポート資金の創設によってですね、たぶん3年連続貸付残高の伸び率は中小零細に向かっての金融機関の伸び率は、3年連続埼玉県は日本1になる可能性が高い。またご承知の通り商工会、あるいは商工会議所等にもですね、年間31億からのですね、人件費補助をはじめ、様々な支援体系をとっておりまして、どちらを優先しているかということは、もう議会の皆様から常に言われてますように、県としては中小零細企業に支援を一生懸命やっておると、その上で、大手の企業も含めてですね、埼玉県に進出していただきたいと、このように考えているところであります。

(質疑時間15分)


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