第115号議案「埼玉県労働会館条例の一部を改正する条例」、第116号議案「埼玉県屋外広告物条例の一部を改正する条例」及び第131号議案「市町村の廃置分合について」に対する反対討論
最初に、第115号議案についてです。
この条例改正は、県労働会館の管理業務を指定管理者に行わせることができるようにするとともに、会館の利用に係る料金を指定管理者の収入として収受できるようにするための改正でありますが、労働会館への指定管理者制度の導入は極めて重大な問題を含んでおり反対であります。
反対理由の第一は、県民が負担する税金で建設され、広く県民に利用されている県有施設を、特定の民間企業の営利追求の手段に提供することには問題があるということです。
「民間でやれることは民間で」というのが知事の信念のようですが、その一方で「県庁を最大のサービス産業に」ともうたっております。しかし、いま知事が行おうとしていることは、公共サービスそのものからの撤退であり、公共施設を民間に投げ売りするような行為です。しかも、管理業務を請け負う企業は元手なしで、県民の財産を使って営利活動ができる、企業にしたらこれほど旨い話しはありません。
民間企業に業務管理を委託すれば、競争原理が働いてコスト削減につながるというのが、指定管理者制度導入の口実にされていますが、参入した企業がコスト削減をしたとしても、それが県民に還元されるわけではなく、民間企業の利益の増大につながるだけです。
労働会館の管理を民間企業に委ねることは、リスクを負わない参入分野を民間企業に提供するもの以外のなにものでもありません。
第二の反対理由は、条例改正案では、現行の利用料金の2割り増しまでの料金幅を設ける利用料金制度を導入し、指定管理者の裁量を認めていることです。
企業は営利団体ですから、利益の増大を図ろうとすれば、利用料が高い方に張り付くのは当然であります。これでは施設を利用する県民の負担は増えても、利用者のサービス向上にはつながりません。従って指定料金制度は導入すべきではありません。
第三の反対理由は、これが最も重大な問題かもしれませんが、公共の造営物の管理を委ねるだけでなく、施設の利用許可や許可取り消しといった行政行為そのものを民間企業に委ねて良いのか、という問題です。
条例改正案では、会館の利用許可や会館利用者の遵守事項及びこれに対する指示、利用条件の変更や許可取り消しといった知事の行政行為を指定管理者に行わせることができる規定となっています。
そこで一例を挙げて、このことの重大性を指摘したいのですが、施設の利用許可の問題では右翼団体の妨害活動を理由に教職員組合の大会などの施設利用を許可しなかったり、許可を取り消すなどの事例が全国各地で起こっております。不許可や許可取り消しの理由になっているのは、今回の条例改正案にもありますように、「会館の管理上支障があると認められる」という規定を盾にとったものが多いようです。
しかし、これまでは少なくとも行政の「長」あるいは管理委託を受けた県出資法人のような公的な団体の判断でこうした行政処分が行われてきたわけですが、指定管理者制度のもとでは、その処分を下すのは民間の企業ということになります。民間企業であっても法律と条例の枠内でこうした行政行為を代行するとはいえ、公権力をもつ行政機関とは異なり、営利を目的とした一民間企業が右翼団体などの圧力や攻撃をはねのけて公正・中立な判断を下せると考えられるでしょうか。
行政行為や行政処分を民間に委ねるというのは、こうした行政行為そのものを歪める危険性を伴うということを、銘記すべであります。
第四の反対理由は、行政あるいは議会のチェック機能や、県民や利用者の施設運営への参加などが十分担保されていないことです。
改正案では、指定管理者には事業報告書の提出が義務付けられていますが、議会への報告義務はありません。また、知事や県議会議員、あるいはそれらの家族が関係する企業の参入を禁止する兼業禁止規定がないというのも条例の不備を示すものです。
さらに、施設の管理が民間に委ねられる以上、施設の運営に対する県民や利用者の参加が保証される仕組みが必要でありますが、改正案にはそうした規定も盛られていません。
そもそも、「公の施設」とは、地方自治法が第244条で定めているように、「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」であります。そうした目的の施設管理にあたって民間企業には儲けの機会を提供しながら、県民や利用者を施設運営から排除するということでは、何のための条例改正でありましょう。
以上の理由により、第115議案には反対であります。
次に、第116号議案についてです。
今回の条例改正は、屋外広告物法及び文化財保護法の一部改正に伴い規定の整備を行うもので、電柱等への掲出を禁止する物件の拡大や広告物の表示等の許可を要する区域を県内全域に拡大するなどを内容としたものであります。
私はこの条例改正について検討する際に、ぜひ考えて頂きたいのは、果たして屋外広告物法や条例ができて、私たちを取り巻く景観が良好になり、風致を害さないものに改善されてきたのか、という問題です。
現行の屋外広告物条例は、その第3条で「広告物または広告物を掲出する物件は、美観風致を害し、及び公衆に対し危害を及ぼす恐れのないものであって、それぞれの地域の良好な景観を損なうおそれのないように配慮されなければならない」と規定し、広告物の掲出を禁止する地域の指定や禁止物件などを定めています。
しかし、一歩外にでれば、街は広告物で溢れています。なかでも幹線道路沿いに立つ郊外型大型店や飲食店などの商業広告物は、自動車を運転するものからも目につき易いよう巨大な看板が乱立し、しかも派手な原色や蛍光塗料を使用するなど、まさに無秩序状態と言っても過言ではありません。
法令違反は数え切れないほどだと思いますが、実際に良好な景観を保持するという上で屋外広告物条例が十分な効果をあげているというふうには思われません。
しかしその一方で、非営利目的の政党ポスター貼りなどに対して、屋外広告物条例違反を口実にして、警察が逮捕、干渉するといったケースが全国的には後を絶ちません。
昨年、兵庫県では、平和行進が通りますという案内ポスターを貼っただけで、逮捕されるという事案も起きています。
屋外広告物法では、「この法律の規定に基づく条例の適用にあたっては国民の政治活動の自由その他、国民の基本的人権を不当に侵害しないように留意しなければならない」と規定し、都道府県や政令市、中核市の条例も当然同じ趣旨の規定をしているにもかかわらず、実際の運用においては不当な人権侵害や政治的活動を妨害するような運用がまかり通っているわけであります。
今回の改正は直接的には、政治的活動に関連する広告物の取り扱いに変更を加えるものではないとしても、従来の簡易除去できる物件に「広告旗」を追加し、張り紙等と同様に道路上の電柱等への掲出を禁止するなど、取り締まりの範囲が広がっています。
美観を口実にして、国民の権利や表現の自由、政治活動の自由が制限される恐れのある屋外広告物条例の一層の強化につながる今回の改正には、賛成できません。
次に、第131号議案は、秩父市、吉田町、大滝村、荒川村の1市1町2村を廃し、その区域をもって秩父市とする、いわゆる合併案件でありますが、わが党は以下の理由により反対であります。
わが党はもとより、市町村合併そのものに頭から反対するものではありません。しかし合併問題は、地域と住民の将来に係わる問題だけに、合併の是非を含めて地域や住民の意向が最大限尊重されなくてはなりません。
しかし、今回の合併では、荒川村を除いて住民投票すら行われず、住民の意向が直接問われることなく行政サイドだけで合併協議が進められていることは問題です。
また、今回の合併では大滝村や荒川村など過疎地が対象となっていますが、合併によって、これらの地域の過疎化がますます進行することが懸念されることです。
例えば、大滝村を例にとると、合併によって村役場はなくなり、秩父市役所の支所となりますが、職員は削減され、当然議会もなくなります。そうなりますと、地域の自立的発展や活性化への意欲あるいは原動力といったものが内部から失われ、最終的には地域の崩壊につながる危険性すらあります。
「自立をめざす村」として有名な長野県栄村の高橋彦芳村長は、平成の大合併について次のように語っていますが、傾聴に値する意見です。
「いまは国土の70%に及ぶ地域が過疎といわれる状況にあります。平成の大合併は隣近所の合併ではなく、広域的な合併で、いわば都市政策です。国土政策として何一つ見識を示していないのは、誠に遺憾の極みと言えるでしょう。したがって合併が進めば、地方都市中心部へのさらなる人口移動が起き、過疎に悩む中山間地の過疎は一層深刻になり、都市問題もまた増幅される恐れがあります」
高橋村長は、「市町村合併の問題は、国土の半分以上を占める山村、日本の原風景ともいえる田舎が消えてしまいかねない問題を含んでいる」とも指摘していますが、国の財政政策によって日本の山村が消滅させて良いのかどうか、まさに国民的な議論が求められているように思います。
以上で、私の日本共産党を代表しての反対討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。