1 ダスキンの資金提供疑惑と知事の政治姿勢について
2 介護基盤の整備・充実について
3 乳幼児医療費助成制度の拡充について
4 行き届いた教育の推進について
(1)少人数学級の拡大について
(2)県立夜間定時制高校の廃止問題について
5 中小企業向け借換融資制度の現状と改善について
6 桶川女子大生刺殺事件の国家賠償請求訴訟をめぐる警察本部長の「失言」問題について
7 憲法を蹂躙する「イラク特別措置法案」に対する知事の見解を問う
ダスキンの資金提供疑惑と知事の政治姿勢について
Q 清掃用品レンタル最大手ダスキンの特別背任事件に関連して、知事の長女である市川桃子さんが経営していたコンサルタント会社ピーチに、ダスキンから大手広告代理店を経由して一千万円に上る資金が支払われていた事実が明らかになりました。
新聞報道等によりますと、ダスキンと桃子さんが経営するコンサルタント会社との間では取引の実態はなく、埼玉県内の工場建設に絡む資金提供との見方もなされています。知事は昨日の一般質問への答弁で、「ダスキンの三郷工場建設をめぐる開発許可について便宜を図ったことなどはいささかもない」と断言されましたが、知事は桃子さんに、この一千万円が何の対価としてダスキンから支払われたのか、事実関係について当然ただしていると思いますが、その内容について明らかにされたいのであります。
新聞報道を見る限り、私はこの資金提供について二つの疑問を感じます。
一つは、ダスキンの芝原容疑者が大手広告代理店の元幹部に指示し、スパイスという会社を経由して資金が提供されていることです。大手広告代理店では、コンサルタント会社の業務実態がはっきりしないことを理由に、資金提供に難色を示していたと一部のマスコミは報じています。なぜ大手広告代理店やスパイスという会社を経由しなければならなかったのか。いま一つは、一千万円に上る取引にもかかわらず、ダスキンと「ピーチ」との間で契約書が交わされていないことです。これは、通常の商取引では考えられないことです。自身と親族企業にかけられた疑惑を本当に晴らすつもりならば、これらの疑問点についても当然解明し、県民の前に明らかにする義務があると考えます。
ところで、今回の疑惑を機に、知事の親族企業と県政との癒着や介入を示唆する報道や告発が目立っています。知事は先月マスコミの求めに応じて、過去三年間に長女の桃子さんが出席した県主催の式典や桃子さんによる便宜供与強要の有無などについて調査されましたが、便宜供与の強要についてはなかったとする調査結果でした。
しかし、この調査結果をまじめに信ずる職員や県民はどれだけいるでしょうか。三年間という期限を切らずに、過去において長女桃子さんが経営する会社や夫に県の仕事が回った事例がなかったのかどうか、直接の請負だけでなく、下請も含めて全面的に明らかにする必要があると考えます。
そこで、私は県政との癒着が指摘されている二つの事例について取り上げ、知事の見解をただすものです。
一つは、県が越生町で進めている「さくらの郷」整備事業において、桃子さんの会社が県の仕事を請け負った事実はありませんか。請け負ったとすれば、どのような経過と理由で仕事を請け負ったのでしょうか。
私どもの調査によりますと、基本計画の策定や新聞広告の企画・デザインは、桃子さんが当時理事を務めていた財団法人「日本さくらの会」に業務を委託しております。しかし、「日本さくらの会」にこうした仕事を請け負うだけの技術や知識があるとは思えません。桃子さんの関連会社に仕事が回ったのではありませんか。
もう一つは、県が新宿に、「埼玉領事館」という宣伝文句で開設した県情報センター新宿の内装などにおいて、桃子さんの会社が仕事を請け負っていた事実はないのでしょうか。ここに、私ども日本共産党県議団に平成九年十一月に寄せられた匿名の告発文書があります。知事に差し上げますので。
この文書では、県情報センター新宿の開設に当たって、「内装設計、設備、什器備品一式から職員の制服、ネクタイ、チーフまですべてを、知事の長女土屋桃子氏の内縁の夫であるデザイナーに依頼した」旨のことが書かれ、「デザイナーの言いなりで贅の限りを尽くした設計のため、開設のための経費は一億五千万円に上ったが、県は、エルタワービルを建設した清水建設との間で随意契約を締結する方法でこの経費を支出した」と告発しています。
知事は、この告発は事実無根と考えますか。事実関係を調査し、この結果についても明らかにすべきと考えますが、知事の明確な答弁を求めるものです。
A 土屋 義彦知事 まずもって、御質問の中で長女の夫のことについて、内縁の夫であると御紹介ございましたが、正式に結婚をいたしております。正式には、長女は市川桃子と申しております。
まず、「ダスキンの資金提供疑惑と知事の政治姿勢について」のお尋ねのうち、「1千万円が何の対価としてダスキンから長女の会社に支払われたのか、なぜ大手広告代理店やスパイスという会社を経由したのか、なぜダスキンと長女の会社との間で契約書が交わされていなかったのかを明らかにすべきではないか」についてでございますが、私は、今だかつて、長女が仕事を始めてから、一度たりとも仕事のことで口を出したことはございません。長女は独立した人格として長女の責任で会社を経営しているわけでございまして、仮に何か法に触れるようなことがありましたならば、日本は法治国家でございますから、司直の手によって明らかにされるべきものと思っております。
次に、「さくらの郷」整備事業に関する御質問についてでございますが、さくらの郷の整備は、私の公約でございます。
この公約に至る、さくらと埼玉県の関わりあいについて触れさせていただきますが、戦後、全国的にさくらが伐採されたときに、当時の埼玉県植物見本園に珍しいさくらの品種が保存されていたことや、大宮台地がさくらの適地で、長く苗木の生産の歴史があったことから、これらに関する埼玉県の人々が中心となって、財団法人日本さくらの会が昭和39年に設立をされました。また、昭和41年に、農林省の林業試験場にさくら保存林が設置されるに当たり、本県の植物見本園から、さくらの苗木が提供されたこと。さらにはまた、昭和53年には畑前知事と財団法人日本さくらの会が共同して、長瀞町に1500本のさくらの苗木の植樹を行い、観光地を目指す試みが行われたところでございます。これらさくらを通じた交流の深い本県に対しまして、平成3年に越生町の国有林の売却が決定されるや、農林水産省から購入打診があり、平成4年に取得の要望を行ったものでございます。
私は、県内に桜を中心とした観光地をつくり、埼玉県民や関東の人達がわざわざ奈良や京都に行かなくても身近で楽しめるようにと、計画をしたものでございます。
まず、お尋ねの「長女の会社が仕事を請け負った事実はあるか」とのことでございますが、当時の監査資料で確認をいたしましたところ、請け負った事実はございません。また、「基本計画の策定及び新聞広告の企画とデザインは、長女の関連会社に仕事が回ったのではないか」についてでございますが、さくらの郷は、花見はもとより、桜の育成に関する研究、さらにはまた、桜に係わる文化も展示紹介する総合的な施設を意図していたことから、桜に関する多くの専門家や有識者を役職員等に擁し、各種の情報等を有する財団法人「日本さくらの会」に基本計画の策定を委託したものでございます。当時、財団法人「日本さくらの会」では、内部に委員会を設けるなど、基本計画の検討を行ったと聞いております。さらにまた、新聞広告につきましても、桜を通じた国際交流を促進するとともに、本県のイメージアップを図るため実施したもので、さくらの郷整備の意図と計画の内容を的確に表現できることが重要であると判断し、当該計画を策定していた財団法人「日本さくらの会」に広告のデザインと原稿フィルムの作成を委託したものでございます。
県では、農林部内に選定委員会を設けデザインの審査を行うなど、厳正な検査を行っておりまして、いずれも委託契約に基づいた適正な処理がなされたものと考えております。
次に、「埼玉県情報センター新宿」に関する御質問についてでございますが、東京都に隣接する埼玉県は、多くの県民の皆様方が東京都に通勤・通学されております。このようなことから、私は、東京都内に、情報収集・提供の拠点を作る必要性を強く感じまして、「埼玉県情報センター新宿」を平成8年10月に開設をいたしました。
この「情報センター新宿」の開設に当たりまして、何か不正な支出があったかのようなお話しでございますが、当時の資料として唯一残っております「監査資料」によりますと、設計業務と内装工事及び設備工事は、入居した新宿エルタワービルを建設をした清水建設株式会社を契約先としております。また、備品の作成業務委託及びユニフォーム作成委託は、株式会社伊勢丹浦和店と契約をいたしております。そこで、清水建設株式会社と株式会社伊勢丹浦和店に、当時の状況を照会いたしましたところ、御指摘のような事実は、確認できえませんでした。いずれの契約につきましても、法令に則り適正に処理されたものと考えております。
私は、知事就任以来、疑念を抱かれるような契約や業者の選定において、トップダウンをいたしたことはございません。
Q 再質問 先ほど知事の答弁の最初に、内縁の夫というところのことでの弁明がございましたが、これは私は引用して、告発文書の中にそういうのがあったので、これは括弧付きで申し上げましたので、この点は明らかにさせていただきたいと思います。知事にもお渡ししましたが、その中でそういうふうに出ていますから、これを引用したわけでありますので、御了承ください。
さて、私は、ダスキンから桃子さんが経営していたピーチへのこの一千万円の資金提供について、何の対価として支払われたのかと事実関係についてただしたのですが、知事は、娘の会社は自分とは関係のない旨答弁されたところです。しかし、長女が経営する会社がダスキンから一千万円の資金を受け取ったこの問題で、東京地検特捜部による家宅捜査を受けたことに対して、知事は何の責任も感じておられないのでしょうか、お伺いします。
また、ダスキンからの一千万円について、県行政とのかかわりが疑惑として提起されている以上、ダスキンからピーチへの一千万円が何の対価として支払われたのか、なぜ大手広告代理店やスパイスという会社を経由しなければならなかったのか。知事は、こうした県民が抱いている疑問に対して、はっきりと本人や関係者にただし、いささかも県民から疑念を抱かれることのないよう事実関係を解明する責任があると思います。今この場で明らかにできないということであれば、是非調査をして県民の前に明らかにするとお約束いただきたいと思います。
次に、さくらの郷整備事業についてですが、日本さくらの会に業務を委託して仕事をしてもらったという旨の答弁でした。しかし、長女の桃子さんが経営する会社や夫に仕事が回ったのではないかという質問については、監査資料で請け負った事実はないとお答えになりました。
実は、平成九年の六月十七日付けの、これ東京新聞社会面ですが、「行革コウ 地方の矛盾」という連載記事が掲載されており、この中で埼玉県の観光開発計画として、さくらの郷が取り上げられているのです。この記事の中で、日本さくらの会が県から請け負った新聞広告は、長女の夫のデザイナーが作成したとの記述があり、その後に、「地位を利用して金もうけをしているわけではない。デザインを誰に頼むか指示はしていない」と土屋知事がおっしゃっています。
そして、デザイナー自身は「身内との批判は覚悟の上。さくらの郷をつくる前に、みんなが理解しながら計画を進めるような広告を出すべき」と、こちらからさくらの会や県に提案したとこのデザイナー氏はいきさつを説明したとここには書いてあります。知事は、長女桃子さんの夫であるデザイナーがさくらの郷の新聞広告にかかわっていた事実を、少なくともこの東京新聞の取材を受けた時点で知っていたはずであります。なぜ事実を隠そうとするのですか。しかも、デザイナーである桃子さんの夫は、自分から会や県に提案したとまで証言しているではありませんか。
県は、さくらの郷整備事業にかかわって日本さくらの会との間で基本計画の策定費として一千七百万円、新聞広告の企画・デザイン料として一千五百万円、合わせて三千二百万円もの委託契約を交わしています。しかし、さくらの会財団内にそれだけの計画を立案したり広告をデザインできるほどの人材や体制があるとは思えません。現に、長年財団の事務局長を務めるホンマ理事は赤旗記者の取材に対して、「私を通した上での仕事ではなかった」と証言しているのであります。県はどのような理由で、あるいはどのような実績を評価して、日本さくらの会を業務委託先に選んだのですか。市川氏に仕事を回すために、日本さくらの会を経由させたのではないのでしょうか、明確にお答えください。
次に、情報センター新宿の問題ですが、内装工事については清水建設、制服などについては伊勢丹浦和店に発注しているということですが、内装工事や設備のデザインはどなたが担当されたのでしょうか。また、内装工事の請負業者を選ぶのに、なぜ入札ではなく随意契約にしたのでしょうか。 情報センター新宿の整備については、九五年度当初予算には予算が計上されておらず、突如九月補正予算に調査費が計上され、事業化が進んでいるわけなんです。新規事業にしては極めて異例なことです。なぜ年度途中に調査費を計上してまで事業化を急がなければならなかったのかが不思議でなりません。
以上の点について、県民が納得のいくような説明を求めるものでございます。
A 土屋 義彦知事 先ほど御答弁申し上げましたとおり、長女はいずれにいたしましてもですね、独立した人格として長女の責任で会社をですね、経営しておりますが、このようなことになったことは、誠に遺憾でございまして、申し訳ないと思っております。まあ、いずれにいたしましても、司直の手によってですね、真相が明らかになりますことを、私は、祈るような気持ちでございます。それからまた、「1千万円の性質について、お答えいただきたい」との御質問でございますが、これは、全くですね、いくら質問されても私の知らないことでございましてね、私は、今だかつて、長女が仕事を始めてから、一度たりともですね、仕事のことで口を出したことはございません。長女は独立した人格として、長女の責任で会社を経営しておるわけでございます。仮に何か法に触れるようなことがございましたならば、日本は法治国家ですから、司直の手によって明らかにされるべきものと私は考えております。
それから、さくらの郷の基本計画の策定業務を、財団法人「日本さくらの会」から、長女の関連会社へ再委託していたかどうかにつきましては、財団法人「日本さくらの会」の内部の問題と考えております。県としては、契約に基づく成果品が納入されていることから、適正な処理がされておると、私は考えております。
…項目が多かったものですから、答弁もれがございましたことをお許しを願いたいと思います。
「情報センター新宿」が入居しておりまするこの新宿のエルタワービルは、平成元年にですね、清水建設株式会社が建設したものでございます。こうしたことから、この設計業務と内装工事及び設備工事は、そのビルの状況を熟知していまする清水建設株式会社に随意契約で契約をいたしたものと考えられます。
エルタワービルを管理する会社に問い合わせた際も、建設した業者に工事をしていただくようお願いしているとのことでございました。
また、株式会社伊勢丹浦和店の関係は、資料等がないので当時の状況は分かりませんが、随意契約については、当時の企画財政部契約業者等選定委員会での検討を経て決定されたものであります。 以上です。
Q 再々質問 ここに、日本経済新聞が連載した「運は天にあり 私の履歴書」、土屋義彦知事のがございまして、私もこれ全部読ませていただいておりますが、この中に、知事の決裁事項は三百七十三、許認可を含む処分権限は二千八百八十八、この他、市町村に対する補助権限や県行政の運営方法を定める権限など合わせると約八千四百の権限を持つことが述べられ、大きな権限とこれだけの予算執行を任された者は、身命を賭してその責任を果たさなければならない、少しでも自分の利益を考えて立ち回ったら、たちまち腐敗の温床ができると書かれております。
今、県の行政をめぐって様々な疑惑が取りざたされている中で、知事はこの自らの言葉の意味をかみしめるべきではないでしょうか。疑いが持たれている問題に対しては、徹底して調査する。たとえ親族企業であっても、桃子さんや会社の関係者から直接事実関係を聴取し、その結果を県民の前に明らかにするのが知事の責任であると考えます。そうした意味で、言葉だけではなくて行動をもって示してこそ、七百万県民は信頼を寄せるのではないでしょうか。改めて、この疑惑が持たれている問題について調査をされるということを、知事の決意をお伺いいたしまして、私の再々質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
A 土屋 義彦知事 再三御答弁を申し上げているとおりですね、我が国は法治国家です。いずれ司直の手によって、真相が解明されますことを私は心から祈っております。
介護基盤の整備・充実について
Q 介護保険制度は実施から三年余が経過しましたが、「利用者が自由に選択できるサービス」との政府のうたい文句とは裏腹に、特別養護老人ホームに入所を希望しても入れない待機者は全国で二十三万八千人にも上っています。本県においても待機者は約五千八百人となっており、制度発足当時と比べ約三倍にも増えています。
県は今年三月、平成十五年度から十九年度までの五年間を計画とする彩の国ゴールドプラン二一を策定しました。特養ホームの整備目標は、平成十九年度末で一万七千五百人分、五年間で六千人分増やす計画ですが、計画初年度の今年度末の増床予定が五百三人分にすぎません。これで計画は達成できるのでしょうか。
また、特養ホーム等の整備に関する厚生労働省の参酌標準では、特養ホームについては、六十五歳以上の人口のおおむね一・五パーセントを参考として、地域の実情に応じて決めることが適当であるとしていますが、本県では高齢者人口比一・三九パーセントと国基準より低い目標設定となっています。本県は、特養の待機者が多いうえ、六十五歳以上の高齢単身者が九万七千三百二十四人と絶対数で全国八番目に多く、また、全世帯に占める核家族世帯の割合も多いなど、介護にかかわる家族機能が弱体化しているという埼玉独自の事情があります。こうした本県の事情に照らせば、少なくとも国基準を下回ることがないよう特養ホームの整備目標を引き上げ、待機者の解消に努めるべきではないでしょうか。知事の見解を求めます。
さて、県南地域は六十五歳以上の高齢者人口が最も多く、県内高齢者の三割以上を占め、特養ホームの待機者も多い地域です。県南地域における特養ホームの建設を進める上で主な障害となっているのは、用地確保の困難にあります。したがって、この地域で特養ホームの増設を図るためには、民間任せではなく、県有地や市有地などの未利用地の活用を積極的に図るべきではないでしょうか。また、特養ホーム待機者の実情把握においても、在宅なのか病院なのか詳しく実態を調査し、今後の計画に反映させるべきと考えますが、健康福祉部長の答弁を求めます。
ところで、在宅のお年寄りが特養ホームなどに短期入所するショートステイは、在宅介護を支える上でなくてはならないサービスです。しかし、ショートステイの不足に直面している市町村でも、保健福祉圏域として整備目標が達成されている場合には、増設が難しいのが現状です。ショートステイの空きベッドがなければ、他の市町村まで行かなければなりません。しかし、それではショートステイの意味をなさないことになります。必要なとき身近な場所でサービスを受けられたらというのが、本人や家族の切実な願いです。
そこで、ショートステイの整備が需要に対して大幅に遅れている市町村については、保健福祉圏域全体の整備目標とは関係なく増設を認め、必要な財政支援を図るべきではないでしょうか。また、家族の急病など緊急事態の場合にも利用できるよう、ショートステイのベッドを一定数常時確保するための財政支援についても検討すべきと考えます。
以上、県の方針について健康福祉部長よりお答えください。
A 土屋 義彦知事 まず、「特別養護老人ホームの整備計画は達成できるのか」についてでございますが、私は高齢社会の進展を考えますと特別養護老人ホームの整備は、必要不可欠なものと考えております。
今年度末の増床予定数は、平成12年度から16年度までを期間とする従来の計画によるものでございます。
今回、この計画を見直し、高齢化率の上昇などによる動向を踏まえ、新たに平成15年度から19年度までの計画を策定をいたしました。この計画において、5年間で6千人分の整備を行う目標を設定いたしましたので、この目標達成に向けまして、着実に特別養護老人ホームの整備を進めてまいりたいと存じます。
次に、「特別養護老人ホームの整備目標について国基準を下回ることがないよう引き上げるべきではないか」についてでございますが、本県は、高齢者のうち、75歳以上の方の占める割合が全国に比較して低いことなど、本県の実情に合わせて特別養護老人ホームの整備数を定めたものでございます。
私といたしましては、介護基盤の整備につきましては、県政の最重要課題と考えておりますので、ゴールドプランを着実に進めまして、県民だれもが健康で生きがいを持ち、安心して生活ができるよう、全力で取り組んでまいります。
伊能 睿健康福祉部長 まず、「県有地や市有地などの未利用地の活用」についてでございますが、県では、地元市町村が公有地を貸与し、社会福祉法人が施設を整備する方式が用地取得を容易にする効果的な手段と考え、現在、公有地を活用した整備計画を優先的に採択いたしております。
今後とも、特別養護老人ホームの整備に当たり、公有地を積極的に活用していただくよう、市町村に働きかけてまいります。
また、「待機者の実情把握」につきましては、入所希望者の現状を把握する上で貴重なデータとなりますことから、次期計画に反映できますよう検討してまいります。
次に、「ショートステイの整備が遅れている市町村への支援」についてでございますが、ショートステイの整備は、特別養護老人ホームと併設することにより計画的に進めております。
ショートステイの整備目標値は、上限を示したものではございませんので、増設を希望する市町村につきましては、できる限りの協議に応じてまいります。
また、「ショートステイの一定数の常時確保」との御提案についてでございますが、県といたしましては、家族の病気等の緊急時にも対応できるよう、今後、ゴールドプランに基づいて、ショートステイの整備を進めてまいります。
乳幼児医療費助成制度の拡充について
Q 近年、乳幼児の間にアレルギー疾患が急速に増えています。県が昨年八月に県内三千世帯を対象に行った「生活環境とアレルギーに関する調査」によりますと、医師にぜんそく、ぜんそく性気管支炎と言われたことがある人は全体の一一・九パーセントに上り、特に五歳から九歳では二五パーセントと四人に一人を数えます。また、厚生科学研究の平成十三年度中間報告によりますと、アトピー性皮膚炎の有症率は、一歳半児で九・八パーセント、三歳児では一三・二パーセントにも上ります。こうしたアレルギー疾患一つを見ても、乳幼児期での早期発見、早期治療がいかに重要かが明らかです。
ところで、本県の乳幼児医療費助成制度は、お母さんたちの粘り強い運動もあって、所得制限こそ導入されたものの、入院については就学前まで、通院については三歳児まで拡充されてきました。全国的に見ても、通院、入院とも就学前まで助成している自治体が、都道府県レベルで東京都や兵庫県など六都県に上り、県内市町村でも、県の制度に上乗せして通院も就学前まで助成している自治体が六割以上を占めています。生活環境の悪化や化学物質による健康被害の増大で子育てに対する不安が広がっている中で、乳幼児医療費助成制度の拡充は急務ではないでしょうか。
そこで、知事に伺います。
第一点は、助成の対象年齢を通院についても早急に就学前まで拡大を図ることです。担当課に試算していただいたところ、拡大に必要な所要額は年額にして約十三億円とのことです。知事の決断いかんではないでしょうか。
第二点は、窓口払いを撤廃し、現物給付への改善を図ることです。現行の制度は、いったん病院の窓口で自己負担分を立て替えなくてはなりません。還付を受けるには、役所で所定の申請手続きが必要です。このため、受診者の二割の人は還付を受けずに医療費を負担したままになっています。全国的には二十三の都府県が現物給付を実施しており、県内でも十五市町村が現物給付を実施しているのであります。疾病の早期発見、早期治療、子育ての経済的負担の軽減という助成制度の趣旨に照らすならば、何をさておいても、窓口払いを廃止することが行政の責務ではないでしょうか。現物給付への移行に伴う県の出費増は、付加給付の調整による一億四千万円程度と聞いております。併せて知事よりお答えください。
さて、乳幼児医療費助成制度については、全国の自治体から国の制度として実施を求める声が強まっています。参議院が二〇〇一年に上げた少子化対策推進に関する決議では、「乳幼児医療費の国庫助成等に重点的に取り組むべき」と明記されています。国も国民世論の高まりを無視できず、さきの医療保険制度の改悪の中でも、乳幼児については三割の自己負担を二割に改善を図らざるを得ませんでした。しかしその一方で、国は、窓口払いを撤廃した自治体に対して国民健康保険への国庫負担金を、調整措置と称するペナルティーを科して減額しているのであります。そこで、健康福祉部長に伺いますが、県内十五市町村に対する調整措置による国庫負担金の減額は総額で幾らになるのでしょうか。
また、関東知事会では、乳幼児医療費の全国一律無料化制度の確立と併せて、国民健康保険に対する調整措置の廃止を求めていますが、この問題に対する知事の率直な見解と今後の取組について明らかにされたいのであります。
A 土屋 義彦知事 「乳幼児の医療費の助成制度の拡充について」のお尋ねのうち、まず「乳幼児の医療費の助成制度の対象年齢を通院についても早急に就学前まで拡大を図ること」についてでございますが、私は、少子化が進む中で、子どもを安心して生み育てられる環境づくりを進めることがきわめて重要であると考えております。この制度は、こどもの健康の増進と子育て家庭の経済的、精神的負担の軽減に大きく寄与しておりますことから、平成14年の1月に見直しを行い、対象年齢を引き上げたところでございます。この制度の一層の拡大につきましては、今後の国の医療保険制度の動向や社会情勢などを勘案しながら検討してまいります。
次に「窓口払いを撤廃し、現物給付への改善を図ること」についてでございますが、健康保険組合の附加給付の計算が困難になることに加えまして、市町村の国民健康保険への国庫負担金の減額措置が行われることや審査支払機関を通じての医療機関に乳幼児医療費を支払う仕組みを作るために新たな財政負担が必要になるなど、解決しなければならない多くの課題があると受け止めております。
さらに、「乳幼児の医療費の全国一律無料化制度の確立と国民健康保険に対する調整措置の廃止に対する見解」についてでございますが、全国一律の無料化制度の確立につきましては、すべての都道府県が乳幼児医療費の助成制度を実施しているところから、国において制度化を図るべきものであると考えております。また、御指摘の関東知事会として、この制度が創設されるまでの間、国民健康保険に対する「調整措置」を廃止することを要望をいたしました。
私といたしましては、この全国一律の乳幼児の医療費の助成制度の創設を毎年国に対しまして要望しているところであり、今後とも強く働きかけまして、その実現に最大限の努力をしてまいります。
伊能 睿健康福祉部長 国民健康保険に対する国庫負担金の減額措置につきましては、現在15市町村が対象となっておりますが、実績が確定しております平成13年度分で申し上げますと、9の市と町で、総額4,078万円となっております。
少人数学級の拡大について
Q 少人数学級を導入する自治体が全国的に広がりを見せ、都道府県段階では本県を含め三十四都道府県に上ります。また、県内では志木市や上尾市など四市が二十五人程度学級など独自の少人数学級に取り組み、現場の教師や父母、子供たちから歓迎されています。
今年二月県議会で我が党議員が、現在実施している「三十八人学級」を二学級以下の学校にも適用を拡大するよう求めたのに対して、教育長は、「これまでも少人数指導のための教員を加配してきたが、来年度は更に一、二学級のすべてを対象校に配置できるか検討したい」旨の答弁をされました。
そこで、教育長にお聞きしますが、今年度「三十八人学級」を実施している学校と学年がどのくらいあるのか、前年度と比べて増えているのでしょうか。また、一、二学級のすべての学校を対象に少人数指導のための教員加配が行われたのでしょうか、併せてお答えください。
ところで、学校によっては、「三十八人学級」の条件を満たしながらも学級増を実施していないのは、どのような理由によるものでしょうか。県教委は学校の現場に足を運んで、当然問題点を把握していると思いますが、教育長よりお答えください。
なお、我が党は、一、二学級の学校についても教員を加配し、「三十八人学級」を実施するべきであると考えます。県教委の試算によりますと、これに必要な教師の増員は七十三人とのことですので、人件費を一人平均九百八十万円と見ても、約七億二千万円の手当てで済みます。少人数指導の教育的効果を全く否定するわけではありませんが、義務教育においては、学習集団と生活集団が重なり合うことのほうが教育上の効果が高いということが、志木市教育委員会の検証でも明らかになっています。
知事は、「子供たちに夢を与えるため」と称して、東洋で最大級のサッカースタジアム建設に何百億円もの予算をつぎ込んだぐらいですから、教育振興のためにこのぐらいの予算は惜しまないと確信するものです。
また、現行の「三十八人学級」は小学校低学年と中学一年に限られていますが、市町村が独自に対象学年を引き上げられるよう、市町村採用の教員給与を県が半額補助するなどの施策を講ずるべきと考えますが、併せて知事の見解を求めます。
A 土屋 義彦知事 「行き届いた教育の推進について」のお尋ねのうち、「少人数の学級の拡大について」でございますが、私は、知事就任以来、一貫して「教育は国家存立の基本であり、瞬時もゆるがせにできえない」、「国づくりは人づくり、人づくりは国づくり」という信念のもとに、彩の国の次代を担う子どもたちの健全育成を県政の最優先課題の一つとして位置づけまして、教育改革に積極的に取り組んでおります。
昨年度から、進めております38人学級につきましては、彩の国の宝である子どもたちの教育環境を、少しでも良くしていこうという考え方に立ちまして、より教育効果の高い対象学年で3学級以上の学校において実施しているところでございます。
本年度からは、一学級ないし二学級のすべての学校につきましても、教育効果を少しでも上げるという視点に立ちまして、少人数指導のための教員を配置いたしました。
極めて厳しい財政状況の中で、山岸議員ご指摘の一学級ないし二学級の学校につきましても38人学級実現のため県単独の教員を加配することや、市町村採用の教員の給与を県が補助し、固定的な経費の負担を増やすことは、難しい状況にあると考えておりますが、今後とも、県と市町村が知恵を出し合い、より効果的な教員の配置のあり方や教育指導のあり方等について検討を進めるなど、教育立県彩の国の実現を目指しまして全力で取り組んでまいります。
稲葉 喜徳教育長 まず、「今年度38人学級を実施している学校と学年について」でございますが、小学校では97校110学年、中学校では52校52学年で実施いたしております。昨年度と比較いたしますと、小学校では8校17学年増加し、中学校では11校11学年の減少をみております。
次に、「少人数指導のための加配について」でございますが、学校や市町村教育委員会が少人数指導などの指導方法の工夫を行い、生徒指導の教育効果を上げることができるよう、本年度から、1学年1ないし2学級の全ての対象校に配置したところでございます。
次に、「38人学級の条件を満たしながらも、学級増を実施していない学校は、どのような理由によるのか」についてでございますが、児童生徒の学校生活の実態から、教科の特性に応じ学習集団を様々に変化させ指導を展開する少人数指導を取り入れる方がより効果的であると学校や市町村教育委員会が判断したことや、学級増のための新たな教室の確保が困難であることによるものであると認識しております。
県立夜間定時制高校の廃止問題について
Q 県教委は、浦和商業高校、蕨高校、与野高校の三校の定時制を廃止し、戸田高校を昼夜開校型定時制高校に再編する計画を進めております。この問題につきましては、今年の二月県議会の代表質問でも取り上げましたが、多くの生徒や卒業生、教師から、この計画に対する反対の声が上がっています。教育長は、夜間定時制高校の廃止・凍結を求めた我が党議員の質問に対して、現行の夜間定時制では開設科目が少なく、生徒の学習ニーズに十分対応できないこと、また全日制との施設設備の共用による生徒会活動や部活動への影響などの課題を指摘し、「定時制高校に通う生徒たちに良い教育環境を提供するために」パレットスクールへの再編整備を進めている旨の答弁をされました。
いかにも生徒の要望にこたえるために再編整備するんだという理屈ですが、現に夜間定時制に通っている生徒たちの多くは、多少の不便を覚悟でも、現在の定時制を残してほしいと要望しているのであります。そこには、夜間定時制高校だけが持つ職業や世代を超えた温かい人間関係、競争ではなく、共に援助し学び合うという学校本来の教育環境があるからではないでしょうか。
私が直接お会いした夜間定時制高校の生徒は、「人間として成長できる場であり、生きる場として保障されていることを実感しています。」「勉強と一緒に、人を思いやる気持ちが学べる」と話され、まさに「教育の原点」を見た思いがしました。
学校の主人公は、教育委員会でもなく、学校や教師でもありません。生徒こそ学校の主人公であり、生徒の声に耳を傾けない教育改革に、果たして未来があるでしょうか。
そこで提案でありますが、夜間定時制高校の廃止については、拙速を避け、当面廃止計画を凍結するべきであります。夜間定時制の三校を将来廃止するか、それとも将来とも存続するかの結論を下すのは、新たにつくるパレットスクールの成果や問題点を見極めた上からでも遅くないと考えますが、教育長の明確な答弁を求めるものです。
A 稲葉 喜徳教育長 現在の定時制課程につきましては、勤労青少年の入学が減少する一方、多様な学習歴のある人の入学が増えるなど、その役割が大きく変化しております。定時制課程の再編整備は、こうした状況に対応し、これからの子供達のために、教育環境の一層の改善を図ることが趣旨でございまして、朝から夜まで開講し、自らの学習スタイルに合わせて学べる、そうした新しいタイプの独立校である南部地区パレットスクールを設置し、これに三校の夜間定時制課程を統合するものでございます。
なお、南部地区パレットスクールは、平成17年度に開校を予定しておりますが、平成16年度までに三校の定時制課程に入学した生徒は、基本的にそれぞれの学校で卒業することとなります。
また、平成13年10月、「21世紀いきいきハイスクール前期再編整備計画案」を公表後、機会をとらえまして、直接、あるいは校長等を通して、生徒や保護者などから御意見を伺ってまいりました。それらの中には、「新しい学校が定時制の取組を活かせるのか疑問だ。」「現在の定時制には、不登校経験者が多いということを理解して欲しい。」などがございました。こうした御意見も踏まえ、本年3月に公表いたしました、南部地区パレットスクール準備委員会の「最終報告」の中に、三校の定時制課程で行われているきめ細かな教育活動や取組を活かすため、教育課程の基本方針として、「基礎・基本を重視した教育課程を編成する。」「ガイダンスや教育相談機能を充実させる。」「ホームルーム活動や学校行事等の特別活動の充実を図る。」などを掲げたところでございます。現在新校の開設準備組織におきまして、その具体化について検討しております。
今後も機会をとらえ、関係者の御意見を伺いながら、より良い教育環境となるよう、パレットスクールへの再編整備を進めてまいりますので、御理解を賜りたいと存じます。
中小企業向け借換融資制度の現状と改善について
Q 県は昨年十一月から、中小企業金融の円滑化を図るため制度融資の「借換制度」をスタートさせました。借換制度の創設については、県内の中小企業団体から強い要望として出され、我が党もその実現を強く要求してきただけに、中小商工業者の資金繰りの改善に大きな期待が寄せられてきたところです。また、京都府や本県が借換融資制度を実施したことによって、国においても今年の二月十日から「資金繰り円滑化借換保証制度」を実施に移し、全国の中小業者の間で利用が広がっていると聞いております。
しかし、こうして全国的に先駆けてスタートした借換制度ですが、先日、全国の保証協会別の借換保証制度実績表を見て、本県の利用実績が余りにも少ないのに驚きました。今年五月十六日現在でまとめた実績では、二百七十四件、金額にして五十二億円にとどまっています。これは東京都の一万四千七百二十六件、二千二百二十一億円、千葉県の四千七百五十五件、八百七十二億円、京都府の五千九百四十四件、一千百五十一億円などの実績に比べてけた違いに少なく、全国最下位クラスであります。
私ども日本共産党は、先月、塩川鉄也衆議院議員と共にこの問題で青木副知事に会い、借換制度が全国と比較してなぜ利用が極端に少ないのかということについて、その理由をただしたところですが、副知事も驚かれて、「確かに低い、どういう理由で伸びていないのか検証していきたい」とお答えになりました。そこで青木副知事に伺いますが、その後、県はこの問題について検証されたでしょうか。検証の結果、どこに問題があったのか、この際明らかにされたいのであります。
私どもが耳にしている情報を二、三紹介しますと、ある業者は、金融機関に問い合わせた段階で、「借換制度は融資条件の変更に当たるから、新規融資は無理になりますね」と言われ、断念したとのことであります。また、東京三菱銀行西川口支店に国の借換保証を申請した業者は、「東京と埼玉は保証協会が違うから無理ですね」と断られ、東和銀行の坂戸支店に出向いた業者も、「やってもいいけど、返済中は新たな融資は一切できないのでやめた方がよいのでは」と言われたというのであります。
そこで青木副知事に伺いますが、第一に、新規融資も可能であることなど、借換制度の趣旨や内容を金融機関や融資の窓口である商工会や商工会議所などに対して徹底を図るべきであります。また、県信用保証協会に対しても、金融機関と連携をとりながら積極的に借換融資に対応するよう要請すべきであります。
第二に、県の借換融資については、国の借換保証制度と同様に、既往借入金の借換えと併せて新規資金の借入れるもできるように充実を図るべきです。この点では、京都府が実施している「中小企業あんしん借換融資制度」を大いに参考にすべきです。京都府では、府や京都市の制度融資のみならず、民間金融機関の信用保証協会保証付きの既往借入金についても年一・五パーセント固定金利で借換えできる上、新規資金の借入れも併用できる制度になっています。ぜひ京都府の制度も参考にしながら、中小企業の資金繰り改善のために抜本的な対策を講ずるよう求めるものです。
A 青木 信之副知事 まず「借換利用実績が少ないことに対する検証等について」でございますが、景気の低迷により、厳しい経営環境にある県内中小企業に対する対策として、特に、売上の減少などにより資金繰りが厳しさを増す中小企業の月々の返済負担の軽減を図るため、平成14年11月から国に先駆けまして県制度資金の借換を制度化いたしました。また、国は、本年2月から保証付借入金を債務一本化し、借換を認める「資金繰り円滑化借換保証制度」の運用を始めたところであります。
しかしながら、県信用保証協会におけるこれら借換制度の利用実績は、結果として他県に比べ少ない状況にあります。この理由としては、金融機関における取組姿勢が慎重であったこと、及び借換よりむしろ月々の返済額を企業の返済が可能な額まで軽減する条件変更での対応にシフトしたためと考えております。この条件変更の実績は、本年2月から5月末までのに限っても、5,409件、540億円余りとなっており、この条件変更と借換制度とを併せた対応状況からみますと、他県に比較して特に少ないという状況ではないと考えております。
借換制度の活用につきまして、県としてはこれまで、商工会議所などの主催する金融説明会などに積極的に職員を派遣するとともに、関係機関に必要な資料を配布し、国の借換制度においては新規融資が可能であることなど、制度の周知に努めてまいりましたが、御指摘のような利用状況にあることに鑑み、6月23日付けで、県信用保証協会や制度資金の取扱金融機関に対しまして、積極的な借換制度の活用を促すための要請を行いました。また、商工会議所や商工会に対しても金融相談の強化について依頼をしたところでございまして、金融機関の理解を得ながら、借換制度を広く活用させるよう取り組んでまいります。
また、「県の借換制度における新規融資の取り扱い」についてでございますが、返済額の増加を伴う新規融資については、将来の事業計画などを個別に審査する必要があると判断し、別途の申込みとしてまいりました。しかしながら、国の制度において新規融資を可能としているところであり、また、中小企業の資金繰りにつき、本県議会の中小企業・農林業を支援する議員連盟においても積極的なお取り組みをいただいているところでありまして、今後におきましては、借り換えと併せて新規融資も可能とする場合の貸付要件や審査のあり方などの課題につきまして、信用保証協会と連携のもとに検討を重ね、更に利用しやすい制度となりますよう努力してまいるものでございます。
桶川女子大生刺殺事件の国家賠償請求訴訟をめぐる警察本部長の「失言」問題について
Q 九九年十月二十六日に桶川駅前の自転車置き場で起きた女子大生刺殺事件の衝撃は、今も私の脳裏に強く焼き付いて離れません。殺された猪野詩織さんの無念、そして最愛の娘を突然失ったご両親の憤りと悲痛さを思うと、いたたまれない気持ちになります。
それだけに、今年二月十三日に開かれた警察署協議会の席で行った警察本部長の発言には、激しい憤りを禁じ得ませんでした。
本部長はこの席上、警察本部が作成した調査報告書について、「埼玉県警は警察庁に従順なものだから、警察庁から『こんな報告書では世論はもたないぞ。警察にもっと非があったのだろう。非を書け』と言われて、不確かなものまで書いてしまった」とか、国家賠償訴訟を起こした詩織さんのご両親について、「多分、原告の方も余りお金を取れないと、ちゃんと多額の賠償金を取れると思って訴訟したのに、これでは話が違う、やはり高等裁判所に控訴しましょうとなるのではないか」などと発言しております。
本部長は、この発言がマスコミで報道され世論の批判を浴びるや、「不適切であり、反省している」と記者会見などで陳謝して見せましたが、県警が作成した調査報告書に対する信頼を傷つけ、殺人被害者のご遺族を侮蔑するような発言が、「不適切だった」という一片の反省で済まされるでしょうか。
なぜなら、本部長は録音テープで起こした自分の発言を自ら点検し、これを警察署長らにメールで配信までしているからであります。
私は、こうした本部長発言の根底には、警察は簡単に非を認めるべきではないといった傲慢なお上意識や、犯罪被害者の声に率直に耳を傾けようとしない人権感覚の欠如があるように思えてなりません。そういう方に本県の治安と安全に責任を負う警察本部長の職責を任せられるでしょうか。
この発言の問題で国家公安委員会が三月二十日に下した処分は、訓戒処分という軽いものです。警察行政に対する信頼を傷つけ、しかも被害者遺族を侮辱するような発言を行った警察幹部に対する処分としては、余りにも軽過ぎると言わなければなりません。
そこで知事に伺いますが、今回の本部長の「失言」をめぐる国家公安委員会の処分について、適正であるとお考えでしょうか。本部長発言に対する知事の見解と併せてお答えください。
また、警察本部長は、自らの発言の責任をとって本部長の職を辞するべきと考えますが、本部長の見解を問うものです。
A 土屋 義彦知事 警察本部長は、国家公安委員会が県の公安委員会の同意を得て任免することとされております。国家公安委員会の今回の措置につきましては、同委員会におきまして、慎重審議のうえなされたものと受け止めており、知事の立場として、意見を申し上げることは差し控えさせていただきます。
桶川事件は、21歳の若いお嬢さんのかけがえのない命が、白昼、奪われるという、誠に痛ましい事件であります。被害者の御両親の深い悲しみを察するに余りあるものであります。警察本部長の発言につきましては、誠に遺憾でありますが、引き続き700万県民の治安確保のために全力で部下職員を督励して頑張ることを当時も厳しく申し上げてまいったような次第であります。
茂田 忠良警察本部長 先ずもって、亡くなられた猪野詩織さんの御冥福をお祈りし、御家族の皆様にお悔やみを申し上げます。
さる本年2月13日開催されました警察署協議会代表者会議におきまして、ご両親様と埼玉県とが当事者となる国家賠償訴訟に関しまして、御遺族の心情などに配慮を欠いた不適切な発言をし、深く反省しております。
このことによりまして、私は、3月20日に、国家公安委員会から訓戒の措置を受けましたが、これを厳粛に受け止めております。
今回の反省に立ち、今後とも県民のため、全身全霊を傾け警察活動に邁進していく所存でございますので、御理解を賜りますようお願いを申し上げます。
憲法を蹂躙する「イラク特別措置法案」に対する知事の見解を問う
Q 有事法制三法は、六月六日、与党三党に加え、民主、自由の各党の賛成により可決成立しました。わが党はこの法案について、米軍が起こす戦争に自衛隊が武力をもって参戦し、国民をしてその戦争に強制動員させる法律であるとして、その廃案を強く主張してまいりました。法案が成立した今、わが党は、「米軍支援法制」をはじめ有事法制の具体化に反対し、有事法制の発動を許さないよう、国民の平和を求める運動と力を合わせ全力を尽くす決意です。
さて、有事法制成立に弾みをつけるように、政府与党は、「イラク特別措置法案」、「テロ特措法延長法案」を提出し、国会を延長して成立を図ろうとしています。「イラク特措法案」は、米英軍が占領するイラクに自衛隊を派兵して、軍事占領に参加させるというものです。しかし、法案には世界の平和秩序と日本の平和憲法を踏みにじる大きな問題が横たわっています。
第一に、法案は、米英が行った無法なイラク攻撃と軍事占領を追認し、そこに自衛隊を合流させることになります。法案では、米英が行った武力攻撃やその後の軍事占領を、あたかも国連決議に基づくように記述していますが、一連の安保理決議がイラク攻撃を容認していないことは、米英が新たな決議を採択しようとして失敗し、一方的な武力攻撃に踏み切ったことでも明らかではないでしょうか。
小泉首相が米軍のイラク占領の根拠として示している安保理決議一四八三は、軍事占領の合法性には直接触れたものではありません。
第二に、戦後初めて、現に戦闘が行われている地域に自衛隊を派兵することになり、憲法の平和原則に対する著しい侵害となることです。わが党は、先にイラク調査団を派遣しましたが、その報告によりますと、いま占領軍が力を注いでいるのは前政権武装勢力の掃討で、治安や衛生などは後回しにされているとのことです。このため占領軍に対するイラク国民の反感が日増しに強まり、占領軍とイラクの民衆との衝突が繰り返し起きる原因になっています。現に、ブッシュ大統領の「戦闘終結宣言」以降だけでも五十人以上の米兵が死亡したと伝えられており、つい先日も、イギリス軍兵士六人が殺害されたばかりです。米軍の現地司令官が言うように「イラク全土が戦闘地域」というのが偽らざる現実です。
法案では、自衛隊は武器・弾薬を含む軍事物資の輸送、傷病兵の移送、治療など戦闘中の米軍を支援し、兵たん部門を受け持つことになり、政府自ら集団的自衛権の行使になり、憲法上できないとしてきたことにほかなりません。いまイラク支援でわが国に求められているのは、自衛隊の派遣ではなく、医療支援や水道、電気、下水の復旧、農業の技術支援などの非軍事分野での人道・復興支援であり、こうした支援は現行法でも可能であります。
知事は第二次大戦に従軍し、多くの先輩や同僚を戦争で失うなど悲惨な戦争体験を持ち、「罪なき国民が尊い命を捨てるような戦争は絶対にやってはならない」という強い信念をお持ちです。当然、今回のイラク特措法案に対して重大な懸念を感じておられると思いますので、法案に対して明確に反対の意思を表明すべきと考えますが、見解を求めます。
A 土屋 義彦知事 イラクの復興につきましては、先般、52の国と地域が参加して国連本部で開かれていた初の国際会議におきまして、今年10月に「イラク復興支援国会合」を開催することが合意されました。日本は、米国やEU、アラブ首長国連邦とともに共同議長国になることが決定をいたしております。私は、国際社会が一体となって、イラクの復興支援を進めるという方向が明確に打ち出されましたことを、大変望ましいことと考えております。また、日本は共同議長国として重要な地位を占めることとなりますが、我が国を含めた国際社会の平和と安全の確保を図るため、積極的にその役割を果たしていただきたいと考えております。
こうした中で、国会で「イラク特別措置法案」が審議されているところでございますが、この法案が、イラクに自衛隊派遣を行い、復興支援活動などに従事させることを内容としておりますため、活動内容や活動地域等を巡って様々な議論が展開されております。
イラク現地では治安の回復が最大の課題とされておりますが、山岸議員御指摘の中にもありましたように、保健医療の整備、ライフラインの確保、食糧の自給、産業・雇用の創出など、復興需要は山積しているものと存じます。我が国は、復興支援国会合の議長国となるわけですから、ぜひとも現地の状況把握を密にいたしまして、広い視野で議論を進め、真にイラクの復興に資する結論が得られますことを、私は期待をいたしております。
私は、国の安全保障や外交の基本政策の根幹に関わる重要な事項につきましては、私は何と申しましても、やはり、この国権の最高機関たる衆参両院において、やはり十分なですね、国民の納得のいくような議論が展開されますことを期待いたしております。この法案につきましても、現下のイラク国内情勢や将来にわたる我が国の国際貢献の在り方などを総合的に踏まえた上で、国が責任を持って、誤りのない判断をしていただきたいと願うものでございます。
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